30 ページ34
その人は、また泣き始めた私との座る距離を少し縮めると、寄りかかるように引っ付いた。
普通の人より低めだとは思うけど、それでもその人の体温は私を安心させた。安心したら、この人も私にとってはとても綺麗な人に見えたから酷い目にあったりしたのかと思ってしまい、自然とそれが言葉に出ていた。
「…あなたも、嫌なこととか言われたり、されましたか?」
「…うん、沢山」
その解答が悲しくて、また視界が歪む。するとその人はキョトンと目を丸くした後、私の肩に自分の肩をくっつけ直して、また読めない表情でじっと私を覗き込んだ。
「…ねえ。オレ、綺麗?お前の目には、オレがカッコよく見える?」
「スン…はい」
「オレが酷ェ顔してるからって人になんか言われてたら、ムカつく?」
「ムカつきます…」
「そ。ふふ…」
そう答えると目の前の人は初めて嬉しそうに笑った。それからポツリと「ホントにココが言ってた通りの奴だな。お前」と呟く。
「…ココ?」
「九井のこと」
「お知り合い…?ですか?」
「ウン、そんなとこ」
あそうだ、あげる。と不意にその人は手に持っていた袋を漁ると、たい焼きを一つ出した。私はそれを受け取って力無く「ありがとございます…」と言うと、一口齧る。
もちもちそれを食べてると、その人も袋の中からたい焼きを取り出して食べ始める。不思議な空間だった。
甘いものはやはり得意じゃなかったけど、怒ったり泣いたりして疲れ切った精神には、その静かな空間も、餡子の甘さもありがたい。
私が一個食べ終わる頃には、その人は2個目の3分の2まで食べていた。甘党なのかな。
その人が食べ終わった頃を見計らって、とりあえずお礼をしようと口を開いた。
「あの、たい焼き、ありがとうございました…あっ、あっ!じ、自己紹介遅れてすみません!九井さんのところで補佐をやっているAAです…」
「うん。知ってる。…マイキーって、呼んで」
「ま、マイキー…さん」
「ン。さんは別にいらねーけど…まあいっか」
「あ、あのこの度は色々ご迷惑をおっ、ぃぎっ!い゛っ!ひ、」
「!」
114人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Kyoro丸。(プロフ) - 超面白いですね(笑)主人公の性格が癖強くて好きです(笑) (2023年2月11日 13時) (レス) @page13 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
icchy(プロフ) - はじめまして!めっちゃおもしろくてハマりました✨是非どんどん続編期待してます!! (2023年1月9日 21時) (レス) id: 1c7a9fb991 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:怪人百面相 | 作成日時:2023年1月6日 15時