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…青年は上下黒のスウェットのような格好をしていた。
社員にしてはラフすぎる服装もさることながら、真っ白な髪と血色の悪い肌、深淵みたいな目、ベッタリとした隈をこさえている。
ただ、その顔はとても整っていて、前述の普通であればマイナスな特徴も、彼のアンニュイな美しさを際立たせていた。

思わず涙も拭かずに見惚れていると、その人の表情が何を考えているか読み取りづらい顔から、だんだん不思議そうな顔に変わっていった。
そして手に持っていた紙袋を揺らして、此方まで降りて来たのだった。死神か、あるいは天使か。今の私にはそういうふうに見えた。
この階段を使う、ということは上層部の人、あるいはその関係者なのだろう。

降りてくるその人をボンヤリ見つめていると、彼は私の横に腰を下ろして私と同じ体勢になり、顔を覗き込んできた。

「…お前。オレの顔見て何とも思わねーの?」

私は黙ってそれに首を縦に振る。

「…綺麗、だと思、います。…私は。でも」


——でもこれは、私だけが持つ価値観。誰にも理解されない、美醜と人の価値。

そう思った途端、またさっきのことを思い出して涙が溢れた。その人は目を瞬かせ、少し驚いたような顔をしながらも「じゃあ、何で今また泣いてんの?」と私に聞いた。

「くやし、悔しかったの、思い出したから…」
「…何が悔しかったの?」
「九井さん、をばかにされて、い、言い返して」
「うん」
「こ、九井さんは、イケメンで、仕事できて、カッコよくて、優しいのに。何も知らない、ゲロブスの営業のくせに、九井さんのこと醜男とか言うから、言い返した。ら、突き飛ばされて、おなか蹴られて」
「うん」
「わ、私、間違ったこと言ってなかった。でも、でも、あの空間は…あの世界は、確かに私が間違ってるって、顔してた…」
「うん」
「それが、すごく悔しい…」
「…うん」

無機質だったその人の声が、段々と柔らかくなっていく。相槌を打ってくれるその声が、ヒビの入った心に沁みて私は言葉を切ってまた泣き始めた。

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Kyoro丸。(プロフ) - 超面白いですね(笑)主人公の性格が癖強くて好きです(笑) (2023年2月11日 13時) (レス) @page13 id: ea6fdef67d (このIDを非表示/違反報告)
icchy(プロフ) - はじめまして!めっちゃおもしろくてハマりました✨是非どんどん続編期待してます!! (2023年1月9日 21時) (レス) id: 1c7a9fb991 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:怪人百面相 | 作成日時:2023年1月6日 15時

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