♯42 ページ45
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次の日、自律思考固定砲台さんは別人のように変わっていた。
「あ！おはようございます、心花さん」
「うん」
「とってもいいお天気ですね！」
「うん……そうだ、ね…………」
「あの夕凪がタジタジに……！」
「初めて見た」
自律思考固定砲台さんは昨日と変わり、穏やかな性格になっていた。殺せんせーがプログラムをいじり、今の彼女の姿にしたとのこと。
この姿になった彼女は、データさえあれば体内での様々な物の造形が可能、将棋の相手もできるし、多くのプログラムにも侵入できるそう。
殺せんせーは自分で作っておいて、このままでは自分の立つ瀬がなくなると喚いていたけど、みんな彼女に釘付けで、せんせーの方は見向きもしなかった。かわいそ。
「それとさ、この子の名前決めない？自律思考固定砲台っていくらなんでも……」
片岡さんの提案により、自律思考固定砲台さん改め、『律』は今日からE組の仲間となった。
……と、思っていたら。
「おはようございます、皆さん」
数日前の無表情律さんに戻っていた。
昨夜、律さんの
「にゅ、親よりも生徒の気持ちを尊重したいんですけどねぇ」
(
(また、始まるのか。あの一日中続く…)
(はた迷惑な射撃が)
みんな警戒していた、あの銃撃の雨に。
だけどそれを否定するかのように、教室内にはたくさんの花の花びらが舞った。
「花を作る約束をしていました」
「律さん……」
「殺せんせーは私のボディに計985点の改良を施しました。そのほとんどはマスターが暗殺に不要と削除・撤去・初期化してしまいました。
しかし、学習したE組の状況から私個人は協調能力が暗殺に不可欠な要素と判断し、消される前に関連ソフトをメモリの隅に隠しました」
「……素晴らしい。つまり律さんあなたは…」
「はい、私の意思で産みの親に逆らいました」
「わお」
「やるねぇ」
機械が自分から持ち主を否定する。それは律さんがただのAIではなく、一人の心をもつ者としての証だ。
「殺せんせー、こういった行動を反抗期というのですよね。律は悪い子でしょうか？」
「とんでもない。中学3年生らしくておおいに結構です」
笑った律さんの笑顔は、これまでで一番のものだった。そう私は確信した。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年8月15日 22時
