♯30 ページ33
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連れてこられたのは廃工場。彼らは汚いソファの上に、私達を放り投げた。
「ツレに招集かけておいた。記念撮影の準備をな。ここなら騒いでもだぁれも来ねぇ」
「撮影……？」
「決まってんじゃん？お前達のだよ。
そうだなぁ、お前は特に多めに撮りそうだ」
私の独り言に男は近づいて答えた。ちょっと息臭い。
すると別の男が携帯にある女の子の写真を私達に見せた。格好も髪色も違うけど、これは間違いなく有希子ちゃんだ。
「東京のゲームセンター。まさかあの名門中の生徒だったとはねぇ」
「有希子ちゃん……」
「これから夜まで台無しの先生が教えてやるよ」
男達は私たちのいる場所から少し離れ、下品な笑い声で話している。カエデちゃんが恐る恐る有希子ちゃんに尋ねた。
「真面目な神崎さんにも、ああいう時期があったんだね。ちょっと意外…」
「想像つかないかも」
「うん……うちは父が厳しくてね、いい学歴いい肩書きばかり求めてくるの、そんな肩書き生活から離れたくて、名門の制服も脱ぎたくて知ってる人がいない場所で格好も変えて遊んでたの。
馬鹿だよね、遊んだ結果得た肩書きは『エンドのE組』もう自分の居場所が分からないよ…」
今にも泣きそうな有希子ちゃん。
どうしてこんなにいい子が、こんな目に合うのだろう。
「…………そう、なのかな」
「え？」
「家って、本来ほっとできる場所だと思うんだ。でもたまに、そんな家に生まれられない子もいる。そんな子が外に逃げたいって思うのは、当たり前じゃないかな」
「……！」
「有希子ちゃん、カエデちゃんも。仲良くしてくれて嬉しかったんだよ」
昔からなんとなく友達が出来なくて、自分から作ろうともしないから、みんなは私を避けた。このクラスでもそうだと思ってたけど、みんなが笑って話しかけてくれたの結構嬉しかったよ。
「家族みたいに昔からいるわけじゃないし、全部話してもらうことも難しいかもしれないけど……“友達”っていうだけで、貴方の居場所にはなれないかな」
「心花ちゃん……」
私は頷くとその場を立ち上がった。自由になった腕を使って。
「「え？」」
「2人とも。手出して」
「こ、心花……？なんで？」
「なんでって……」
「あーーー！！！」
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年8月15日 22時
