赤羽くんと夕凪さん【暗殺教室】 (ページ22)

今日:93 hit、昨日:197 hit、合計:7,249 hit

♯20 ページ22

.

せんせーとの面談で少し遅くなった。もし兄さんが帰ってたら質問攻めにされそうだから、早く帰ろう。
そう思いながら校舎を出ると、入口に赤羽くんが立っていた。

「お、終わった？」

「待ってたの？」

「うん」

「なんで？」

「決まってるじゃん」

『夕凪さんと帰りたいから』赤羽くんは、いつもの口調でそう言った。

「親御さん、心配するよ」

「俺の親、どっちも旅行中」

「……そっか」

簡単に会話を終わらせると、私達は足を進める。今日からは新しい本読もうと持ってきたけど、さすがに暗くなってきたから読まない。

「今日はながら読書しないの？」

「暗いから読めないもん」

「そっか〜。あ、この間読んでたやつ、真犯人コンビニバイトのお姉さんだったでしょ？」

「知ってたの？」

「うん。俺最初は医者だと思ってたんだけど、意表突かれちゃったよね」

赤羽くんもあの本知ってたんだ。

「私も……お医者さんだと思ってた」

「やっぱり？俺と夕凪さんそっくりだね」

「…普通に考えたら、みんなお医者さんだって思うよ」

「えー」

そこからはまた赤羽くんが一人で喋り始める。今日は本読んでないから、時々相槌を返す。

『やっぱ可愛い』
『今度デートしよ』
『俺彼氏にしたらメリットいっぱいあるよ』

赤羽くんは、時たまこんな冗談を混ぜてくる。

「夕凪さんさぁ、殺せんせーとどんな話してたの？」

信号で足を止めていた時、赤羽くんはそう尋ねてきた。

「……別に」

「………………夕凪さんて、」

信号が青くなった。この時間になると、盲目者用の音楽はならない。

「本当はもっと賢いでしょ？」

「……なんで」

「俺覚えてるよ。一年生の時は全国模試一位だったじゃん」

「…………」

「それにさっきの推理小説。難しいってネットで話題だよ。
ねぇ、何隠してるの？」

チラと赤羽くんの方を見た。獲物を見つけたような、肉食動物みたいにギラついた瞳をしていたのは、気のせいだろうか。

「夕凪さ」

「聞かないで」

「……！」

点滅しだした信号を急いで渡る。赤色になる頃には、私と赤羽くんの間に車が通った。

「バイバイ」

振り返ってそれだけ言った私は、そのまま家に帰った。
足が少し早く動いていたのは、気のせいじゃないと思う。