♯12 ページ14
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「何してるの、潮田くん」
せんせーのテスト対策を受けたその日の放課後。忘れ物をした私が職員室の前を通ると、潮田くんが聞き耳を立てていた。
「っ！夕凪さん……！？」
「……面白い？」
「いや、その……」
口ごもる潮田くんの隣に私も立ち、中を少し覗く。
「率直に言えば、このE組はこのままでなくては困ります」
あ、この声聞いたことある。理事長先生だっけ。
「働きアリの法則を知っていますか？どんな集団でも20％は怠け、20％は働き、残り60%は平均的になる法則。私が目指すのは、5%の怠け者と95％の働き者がいる集団です。
『E組には行きたくない』『E組のようにはなりたくない』と強く思うことで、この理想的な比率は達成出来る」
「なるほど、合理的です。それで5%のE組は弱く惨めでなくては困ると…」
それが理事長の理想の教育。95%の為に、
「今日、D組の担任から苦情が来まして。うちの生徒がE組の生徒から凄い目で睨まれた、『殺すぞ』と脅された、と」
「…………」
潮田くん、多分何かやらかしたな。
「暗殺をしているのだからそんな目つきも身につくでしょう。それはそれで結構。問題は、成績底辺の生徒が一般生徒に逆らうこと。それは私の教育方針では許されない。以後慎むように厳しく伝えてください」
すると理事長は胸ポケットの中から、何かを探り殺せんせーに投げた。
「殺せんせー、1秒以内に解いてください」
「え、いきなり〜〜！？！？」
出されたのは知恵の輪。それもパッと見た感じ、簡単には解けなさそうなやつ。
殺せんせーはいつものスピードで解こうとするが、何故か小さい知恵の輪と触手が絡みついて倒れた。
「確かにこれなら、どんな暗殺だって交わせそうだ。
でもね、殺せんせー。この世の中にはスピードで解決できない問題もあるんですよ。
では、私はこの辺で」
理事長はそう言うと、ドアに手をかけた。潮田くんは咄嗟に体を壁に寄せるが、理事長はもう外に出ていた。
「やあ、中間テスト期待しているよ。頑張りなさい」
さっき話していた時とは、全く違う笑顔で潮田くんにそう言った。
「君もね、夕凪さん」
理事長は私の隣を通り過ぎる時に、肩に手を置いてそう言った。
「“元”全国一位の実力、戻ってきているといいね」
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年8月15日 22時
