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「っ…………」
汗をかくルウの顔を下から見上げる。
彼だけじゃない。他のみんなも、本気で戦っている。それなのに、私は……魔法が使えない私はみんなのお荷物だ。
＿＿また、ああなってしまうのかな……。
「魔導ビーム、再装填完了。ターゲットを確認」
「！？ ルウ！」
別の鎧と戦っているルウの後ろから、一体の赤い目をしたカローンがこちらに近づいていた。前からぞろぞろとやって来る大量の鎧と、挟まれた形だ。
「ちっ！」
「ルウ、もういい！下ろして！」
「いけません！魔法が使えない姫様が狙われれば、間違いなく怪我をしてしまう」
「でも……っ！」
ルウも切羽詰まってるはず。ここから抜け出そうにも、穴はないし、空を飛ぶにしても彼の翼は大きすぎる。
「3、2、1…………発射！」
「「！！」」
赤い目のカローンがこちらに、あのビームを打ってきた。更に前方の鎧たちも、ビームに合わせて襲いかかってくる。
ルウは私を強く抱きしめた。もうダメだ……と、目を瞑った時＿＿＿
「『流れる
「「！？」」
謎の呪文が聞こえた瞬間、私たちの周りの鎧の背後に紫色の時計が現れる。とんでもない速度で長針と短針が周り、12時を指した時、鎧たちはピタリとも動かなくなった。
「と、まった……？」
「この魔法は……！？」
石のように動かない鎧たちの間から、コツコツと靴の音が聞こえる。大量の鎧の影から姿を現したのは……。
「よっ、案外元気そうだな」
軽々しく手を挙げて、彼はそう言った。
「シュウ！」
「なっ……シュウも、何故ここに！？」
「話は後だ。俺の魔法ももう少しで解ける」
シュウが指さした背後では、長針がもう少しで一周するところまで進んでいた。
「あの針が一周すれば、“渡し守”たちは動き出す。構えろ、ルウ」
「ああ！」
ルウは私を優しく床に下ろすと、シュウの隣に並んだ。
「ユウ。お前は出来るだけ影の方にいろ。何かあれば叫べ、すぐに俺かルウが向かう。
……いい子に、できるな？」
「……！ うん」
シュウはこちらを一瞥すると、魔法が解け、動き出した鎧たちにルウと共に挑んで行った。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年4月2日 9時
