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Epel side
＿＿＿俺、また見てるだけじかできねぇのか！
カローンから逃げ遅れたユウサンたちを助けるため、ルーク先輩は2人の元へ走っている。
けれど……正直このままじゃ、絶対に間に合わない。
「発射まで3、2、1……」
刻一刻と近付くカウントダウンの終了。
足は茨に囚われたように、全く動かない。全身から汗が吹き出し、体温が上がっていくのだけが確かだった。
そんな時……。
「え…………」
＿＿＿一瞬だけ、彼女は怯えていた。
今は目を瞑って、職員を庇っている。だけど、確かに俺の目はユウサンが光に怯えているところを見た。
ハッとこれまでのことが、脳裏に流れる。
ヴィルサンから俺を助けようと、億さず彼に挑んだ姿も。
お化けが苦手で泣き叫んでいた姿も。
『ＶＤＣ』で負けても、誰よりも賞賛してくれた姿も。
あのマレウスサンにも、友だちのように笑いかける姿も。
血を落としても、大切な人のために立ち上がった姿も。
……そうだ。ユウサンは、ユウは…………。
度胸があって、底抜けに優しくて、何事にも躊躇わないで……だけど変なところで打たれ弱い、ただの女の子だ。
怖いのだって、当たり前じゃないか……！
＿＿役立だず！こごまでなにしにきた！なにもできずに見てるだけなんて、もう嫌だ！
そう思った時、俺は走り出していた。
「！？エペルくんの魔力が急速に高まっていく……これは！」
オンボロ寮での襲撃を思い出す。みんなが傷ついていく中、俺は何も出来なかった。友だちを守れなかった。
「っ…………！」
本当は、ユウだって、怖かったはずなんだ。
友だちが傷ついていくのも、魔法の力を奪われて、この島に来るのだって……きっとこの世界に来た時もそうだったんだよね。
「エペル……？」
自分の生まれた世界を離れて、こんな辺鄙な場所に来ても、君は弱音も愚痴も吐いたことがない。
たしかに、君は強いのかもしれない。
でも、泣いたっていいと思う。
俺たち、友だちだろ？君の弱さを受け止められないほど、愚かじゃない。
君が弱った時、泣いた時……その時、俺は傍に寄り添える存在になれないかな。
「……発射！」
「させるかぁーーーーーーーッ！！！」
君には、笑っていてほしい。笑う君は、どんなに良く出来た林檎より輝いていると……俺は知っている。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年4月2日 9時
