検索窓
今日:44 hit、昨日:10 hit、合計:7,968 hit

▶︎ ページ44

.

No side



「やはりここにおったか、マレウス」



リリアがやって来たのは、オンボロ寮の談話室。
元々はただの廃墟で人が住めるような場所ではなかったが、ユウたちが住み始めて、やっと生活感が出てきたと思えば、襲撃に遭い、この有様だ。
談話室の中心では、リリアが探していた人物が寂しそうに佇んでいる。

「……リリアか。どうした?」

「お主が部屋からいなくなった、とセベクが騒いでおってな。探しにきたのだ」

「ああ……何故か昨日から10分おきに僕の部屋の前へ現れるものだから、気になってしまって」

「はっはっは!あやつは声もでかいが、気配も騒がしいからなぁ」

先程のセベクの話を思い出しながら、リリアは笑う。しかしマレウスはスルーし、静かに口を開いた。

「少し1人になりたくて、ここへ来た」

「……ここは入学して以来、お主のお気に入りの秘密基地じゃったからのう」

「そうだな。ユウが現れてからは、そうもいかなくなったが……」

マレウスは初めてユウと出会った日を思い返す。あの時は無視したが、自分相手に『不法侵入者』と疑ったり、自分の存在を知らない者がいたことに驚いていた。

「……ユウがここに住み着き、最初は残念に思った。
僕は、廃墟が好きだ。崩れた壁に這う蔦、割れた窓から忍び込む風……人々に忘れ去られた場所の孤独で静かな空気は、僕を落ち着かせてくれる。歴史に置き去りにされるのは、僕らだけではないのだと」

「…………」

「でも……何故だろうな?ユウたちがいなくなり、活気が失せたこの場所を歩いていると……茨の棘が肌を擦るような不快感がある。僕が気に入っていた廃墟の姿へ戻ったはずなのに……」

「マレウス…………」

あの日の夜、マレウスはリリアに悲しそうに話していた。あの建物が廃墟ではなくなった、と。

しかしたまにあの場所へ遊びに行く度、少しずつ彼は嬉しそうに話をしていた。
ユウとの出会いが、マレウスに何かの影響を与えている……そうリリアは感じていた。

▶︎→←悠久スターライト!



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
26人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紅葉 | 作成日時:2023年3月18日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。