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No side
「はぁ……なんで人間には“心”なんて厄介なものが標準装備されてるんだろう。動作が不安定、しかも制御不能なシステムなんて完全にバグだし、初期不良じゃん。デバッギング本当にしたんか?嫌んなりますわ……」
またもやため息。ナイトレイブンカレッジの問題児たちを引き取ってからというもの、彼のそれの回数は計り知れない。
するとその時、パソコンにメッセージが届く音がした。
「……ん?『マッスル紅』氏からのメッセ?あーっ!!今日は新実装の高難易度クエ行こうって約束してたんだった!忘れてた!」
『マッスル紅』とは、イデアと1番付き合いの長いネトゲ友だち。普通の人とは長続きしないイデアと、こうも親交が深い者は珍しい。
「実家のパソコンに最新拡張パッケージインストールしてないし……今日一緒にクエ行くのはちょっと無理だな……」
いつもは寮に引きこもって、自分のパソコンやゲーム機器で遊んでいるが、ここは仕事場。そんなものは置いていないため、思い出した約束を破ることになる……そう思いながらチャットに参加する。
【マッスル紅:『ネクラ侍』よ。今日の夜に予定していた新ダンジョン攻略についてだが……】
【ネクラ侍:おつです『マッスル紅』氏!】
【ネクラ侍:すみませぬ、拙者リアルでヤボ用ができてしまいまして……】
【ネクラ侍:約束してたクエ、今夜は一緒に行けなそうにないでござる!】
【ネクラ侍:ネタバレ踏む前に最速クリアしようって約束したのに、面目ない……!】
【ネクラ侍:拙者のことは気にせず、先に楽しんできてくだされ!】
【マッスル紅:謝ることはない。実は某も本日は都合が悪くなり、】
【マッスル紅:断りの連絡を入れるためにメッセージを送ったのだ。】
【ネクラ侍:あっ、そうなんだ……じゃあ、また日を改めて共に参りましょうぞ!!】
【マッスル紅:ああ、楽しみにしていた拡張パッケージだ。】
【マッスル紅:やはり新マップはこのゲームは初めて以来の戦友である、お主と共に攻略したい。】
「……待って……さらっとそのセリフ出てくるの、カッコよすぎか……?
『マッスル紅』氏。一緒にゲームをやり始めてもう2年は経つけど……踏み込みすぎない距離感といい、ぼっちオタクがグッとくる言葉をかけてくれる優しさといい……『ありがてぇ〜』っていう感情しか沸かんのですわ」
『マッスル紅』の言葉をしみじみと受け取りながら、イデアはチャットを続ける。
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作者名:紅葉 | 作成日時:2023年3月18日 11時