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No side
「普段使いのものじゃなく、“特別なおまじない”が込められたスペシャルケア用品を持ってきたみたい。カローンたちに乱暴に連れ去られたのを見て……とんでもなく劣悪な状況に置かれてると考えたのかもしれないわ」
「カローンたちと戦っても勝ち目がないって分かってたはずなのに、それでも追いかけてくるなんて……ルークさんたちは本当に友だち想いなんだね」
「いや、友だち想いで済むレベルか？普通に怖いんですが……」
「ふっ。確かにクセは強いけど、慣れれば裏表がなくて付き合いやすい男よ、ルークは。裏表がなさすぎてデリカシーがないのが玉に瑕だけど。……おかげで来週に控えた雑誌のカヴァー撮影には、最高のコンディションで挑めそう」
こんな状況でありながらルーク同様、ヴィルも来週の撮影のことは気にしていたらしい。
「外部から被検体への差し入れを許可するなんて、きっと顔見知り特権よね？感謝するわ、ボス」
「別に。吠えまくる猛獣をなだめるためのジャーキーを与えただけにすぎないんで」
「本当にいちいち腹が立つ言い方してくるわね、アンタ。話が終わりなら、アタシは部屋に戻らせてもらうわ」
「ハイ。乙でーす……」
イデアの態度に腹を立てたヴィルは、スキンケア用品を手に、会議室を出た。彼の背中を見送ったとほぼ同時に、イデアにオペレーターから連絡が入る。
「あい、こちらイデア･シュラウド」
『所長代理。ケースナンバーLOD-627へ適応される『レテの河』についてのご報告です。
現在88＆チャージ完了。本日フタゼロマルマル、本部に収容されている被検体A〜E、そして賢者の島全域、その他関係者への使用が可能となる予定です。インターネット上へ流失した情報については、現在情報対策班･ムネーモシュネーが対応しています』
「はい、おつかれさん。じゃあ『洪水』を超すのは0時にしよう」
『了解。賢者の島へはヘキサ班が出動予定です』
「了解。あー、そうだ。ナイトレイブンカレッジには、茨の谷の次期当主マレウス･ドラコニアが滞在してる。妖精は『レテ』の効き方に人間と差があつはずだから、注意して調整して。あのへんのご長寿な種族が知ってて当然の情報まで押し流したらまずい」
『了解』
オペレーターとの通信を切ったイデアの隣で、オルトは悲しげな顔で口を開く。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2023年3月18日 11時
