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彼の言葉にはっとした私は、力の抜けた腕をすっと下ろした。ふと手を見ると、強く握った時に爪がくい込んだのか、ところどころ赤い線が浮き上がっている。

私の瞳が揺らぐ近くで、オルトくんがイデア先輩に小さく尋ねた。

「兄さん、これからどうするの?このままナイトレイブンカレッジへ強制送還?」

「そうしたいところだけど…………………………オルト、ちょっとこっちに」

そう言って、2人は私たちから少し離れた所へ。



「『レテの河』はなるだけ同時に使用したほうが、認知の齟齬が少なくなる。それにアイツらを学園に戻したとして、『レテの河』の準備が整う前に教師や他の生徒を焚き付けられても厄介だ。だから本部にいる問題児たちの検査が終わるまでは、ルーク氏たちも島内の施設にいてもらおう」

「確かにそうだね。ルークさんたちがこの島へたどり着いた方法もデータが取りたい。本部にアクセスして、彼らを安全に留置しておける場所を検索してみるよ。
……ちょうどヘカーテ地区の研修施設に空き部屋がある。僕が案内して調書を作成するね。サインしてもらわなきゃいけない書類もあるし」

「助かる。僕は本部に戻って、さっさと問題児どもの検査を終わらせないと……。昨日保留にしてた被検体Fの調査、少し時間がかかりそうなんだよなぁ」

「グリムさんは本当に特殊な被検体だもんね。頑張って、兄さん」

何やら身内話でもしているのか、2人はこちらに背を向けたままだ。
わたしも少し落ち着いてきた頃、オルトくんは明るい声で私たちを招集した。

「はーい!それじゃあルーク・ハントさん。エペル・フェルミエさん。それから、ユウ・ホワイトさん。君たちには聞きたいことが沢山あるんだ。僕についてきてくれる?」

「ウィ。だがその前に、ひと目だけでもヴィルたちに会えないだろうか?元気な姿を見て、安心したいんだ」

「検査が全て終わるまで、被検体への接触は許可できない。ごめんね。全行程終了を確認したら面会できるよう手配するから、もう少し我慢してくれるかな」

「そうか……わかったよ。滞在を許してもらえるだけでも、良しとしなくてはね」

侵入してきた私たちがここに留まれることが、有難い。今は何もしないのが最善だ。

「……ってわけで、僕は本部に戻るけど……追加実装した問題児たちは、これ以上変な気をおこさないように。大人しくオルトの指示に従って。じゃあね……」










「イデアくん、待っておくれ!」

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作者名:紅葉 | 作成日時:2023年2月26日 11時

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