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「なにを仰います。南の国ではこれが正装。郷に入っては郷に従え。
冬の寒さを逃れ、南国で穏やかな海を眺めつつハンモックでココナッツジュースを飲む……そんな優雅なバケーションを満喫しようなんてちっとも思ってもいませんとも。ええ」
「な、なんて具体的な言い訳だ……！」
「正直なお口」
「オマエだけずりーんだゾ！オレ様たちも南国に連れてけ〜！」
「えぇ？それでは楽しい休暇が台無し……ゴホン！」
うわ今本音がでてた！録音しとけばよかった！！！
「君らを連れて行くには危険な調査になりそうですからここは私が1人で向かいます。
それに、君たちには学園に残り重要な任務にあたってほしいのです。ナイトレイブンカレッジの存続に関わるとても重要な任務です」
「また調子のいいことを」
学園の存続って、いくらなんでも大袈裟すぎない？私はジトーッとした目で学園長を見つめた。
「この任務を請け負ってくれるなら休暇中の食料の補給はもちろん……ホリデーのご馳走についてもお約束します。ローストターキーにケーキにジンジャーブレッドハウス……そうだ、アツアツのスペアリブやフライドポテトも山盛りお付けしましょう。いかがです？」
「ふな゛っ！？アツアツのスペアリブにフライドポテト……！？ふ、ふん。話くらいは聞いてやってもいいんだゾ」
「ホンットお手軽だね〜、お前……」
「それよりヨダレ拭こうか」
美味しそうな食べ物を想像したのか、グリムの口の端からはゆっくりヨダレが垂れている。ポケットからティッシュを取り出し、サッと拭いた。
「ゴホン。この学園の食堂や暖炉の火は全て火の妖精の魔法によって賄われています。彼らは長年、大食堂の暖炉に住み着いているのですが……毎日よく乾燥した薪を与えなければ消えてしまうのです。
火の妖精がいなくなれば、学園は冬のたびに凍えるような寒さに包まれることになります」
「そういえば、エアコンもないのに学園内はいつも温かいと思ってた」
「やっぱ魔法だったんだ」
「今までは長期休暇中も厨房係のゴーストが火の番をしていてくれたのですが……今年は娘夫婦にお子さんが産まれたそうで初孫の顔を見にあの世に帰省するんだとか。
ですので、彼の代わりに君たちに火の番を頼みたいのです」
「ゴーストに初孫とは……？」
「そこは愛が生んだミラクルということで深く考えてはいけません」
「？？」
これあれだね、学園長も分かってないやつぅ〜〜。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2022年9月5日 19時
