▶︎ ページ48
.
謙虚な態度のジャミル先輩に、寮生たちは声を上げる。
「それも、ジャミル先輩の助力あってのものじゃないですか!寮生はみんな知ってますよ」
「なんで前寮長はジャミル先輩を選ばなかったんだ!?」
「前寮長を責めるな。アジーム家の親戚筋の人間が
「えっ……?」
ジャミル先輩はうっかりと、口を滑らせた。
つまり、前寮長はカリム先輩の親戚筋。そんな人が当たり前にジャミル先輩をカリム先輩より優先するわけがない。
「はぁ〜!?また“アジーム家”なんだゾ!?」
「そんな事情があったなんて、知らなかった……つまり、コネじゃないですか!」
「汚ねぇ……汚すぎるぜ、アジーム家!」
「頼む。どうか今の話は聞かなかったことにしてくれ」
そうジャミル先輩が懇願するも、怒りと不満が募る寮生たちは誰も耳を貸さない。完全に頭に血が昇った彼らは、口々に文句を言い始める。
「ナイトレイブンカレッジは、実力主義だからこそ名門と呼ばれている。親の威光で評価されていいわけがない!」
「そうだぜ、副寮長!俺たち、そんなの納得いかねぇよ!」
「学園の中では身分や財力なんか関係ない!誰もが平等であるべきでしょ!」
「それは……しかし……」
寮生たちの気迫に、ジャミル先輩はたどたどしく、曖昧な返事をした。
「スカラビアは砂漠の魔術師の熟慮の精神をモットーとした寮。俺は昔から、アジームよりバイパーのような思慮深いヤツが寮長になるべくだと思っていたんだ」
「待ってくれ。俺だって特別優秀なわけじゃない。成績だって、いつも10段階でオール5の平凡さだ。寮長にふさわしくないよ」
「寮の精神に相応しいかどうかは、魔法力じゃない」
「お前たちはどう思う?俺たちの中で、誰が寮長にふさわしい?」
カリム先輩とジャミル先輩と同年代の寮生が意見する。他の寮生も周りに問いかけた。
「そんなの、ジャミル先輩のほうが寮長にふさわしいに決まってる!」
「そうだ。カリム先輩より、ジャミル先輩のほうがスカラビアの寮長にふさわしい!」
「身分ある家の生まれだからって無能が寮長でいていいわけがない!」
「そうだそうだ!スカラビアに無能な寮長はいらない!」
最悪な方向に結論が傾いてしまった。カリム先輩への寮生たちの信頼はゼロに等しくなり、皆口を揃えてこう言った。
___「「「「「スカラビアに無能な寮長はいらない!!!」」」」」
29人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紅葉 | 作成日時:2022年9月5日 19時