▶︎ ページ40
.
「ごそごそ……ごそごそ……」
「ん?どうかしたか?」
「い、いや?なんでもねぇんだゾ!」
「よし!今用意してやるから少し待ってろよ!」
何やらごそごそしているグリムにカリム先輩は話かけた。私も気になっていたけれど、彼が何もと答えるとジャミル先輩と一緒にキッチンの方へ向かった。
「……オレ様、いよいよ混乱してきたんだゾ。今のカリムは人の話をきかないけど悪いヤツじゃねぇ気がするんだゾ」
「そうだね、とっても優しくて朗らかなのに……」
従者であるはずのジャミル先輩の手伝いも乗り出し、オアシスに行った時にみんなの為に水を出してくれた。
昨日、私達を空の旅へ連れ出してくれたのだって、彼の真っ直ぐな心が行ってくれた行為だ。
それなのに行進の最中や昨日の夕食の時のカリム先輩は、明らかに異常だった。いつもの笑顔は消え、まさに傲慢な王のように厳しい。
寮生の反応やマジフト大会の時の彼を思い出すに、前者が本当のカリム先輩なんだろうけど………一体なんで……?
タッタッタッ
入口の方から足音が聞こえた。見ると、そこに立つはカリム先輩。
__あの曇った瞳を持った。
「おい、お前たち……いつまでメシを食ってるつもりだ!王様にでもなったつもりか!?」
「「「「「え、えぇ〜〜〜〜!?」」」」」
「今すぐ食器を片付けろ!すぐに午後の特訓を始める!」
「「「は。はい……っ!」」」
再びの豹変っぷりを見せたカリム先輩。
彼の指示で食べかけの料理も真っ白になったお皿も、急いでキッチンへと運ぶ寮生たち。
「ヒィ……また怖い方のカリムになっちまったんだゾ!」
「ユウたちも逃がさないぞ。今日は夜までみっちり防衛魔法の特訓だ。
さあ、庭に出ろ!」
「情緒不安定ってレベルじゃない!」
多重人格者なの、カリム先輩は!!こんなのおかしすぎるでしょーがぁ!!!!
29人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紅葉 | 作成日時:2022年9月5日 19時