急転タイラント! ページ39
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寮に戻り、ジャミル先輩は他の寮生を数名引連れて、キッチンへ潜った。
しばらくするとたくさんの料理が談話室に運ばれてきて、朝食の時間となる。
「はぐはぐ!もぐもぐ!くっ……こんな囚人生活からは一刻も早く逃げ出したいのに、悔しいことにメシだけはメチャクチャ美味いんだゾ!!」
「あはは……」
「しゅうじんせいかつ?よくわからないけど気に入ったなら良かったぜ。たくさん食えよな!グリム、今日は牛乳の青カビチーズがあるぜ。たっぷりクラッカーに乗せて食えよ」
「えっ。クラッカーはもういいんだゾ……」
「なんだよ、遠慮すんなって!あっはっは!」
「むががっもがっ!ほががっ!」
手にチーズとクラッカーを大量に持っていて、嫌な予感はしていたが……素晴らしく的中。
しばらくグリムはクラッカー恐怖症に陥っちゃいそう。
「カリム。そう次々と食い物を口に詰め込むんじゃない。グリムが窒息するだろ」
「おっと、ゆっくり食っていいんだぜ。まだまだあるんだから」
「もぐもぐ……ごっくん。うぅ、そういう問題じゃねぇんだゾ〜〜……」
天然なの??ここは天然しかいない寮なの??そんなことないよね、ジャミル先輩しっかり!!!!
「今日は昨日食えなかったアイスクリームをデザートに用意してあるぞ。たくさん種類を並べて、でかいスプーンで好きなだけザクザクすくって食べるのがカリム流だ」
「そこまでくると最早アイス屋さん開けますね」
「スプーンでザクザク……?」
「そうそう。いくら腹一杯でも、デザートは別腹だろ?今持ってきてやるから待ってろよ」
よく分かってらっしゃる、カリム先輩……!そう、おやつは別腹なんだ!!!
腰を上げたカリム先輩を見ると、ジャミル先輩はすぐに立ち上がる。
「! カリム、待て。俺が用意してくるから、お前は座ってろ」
「いいって。アイスの用意なんか、冷蔵庫から出してくるだけだろ?」
「馬鹿。主人に給仕させる従者がどこにいるんだ。お前はもう少しアジーム家の後継としての自覚を持ってくれ。お前にそんなことさせたと知れたら俺が父さんたちに怒られる」
「ジャミルは本当に真面目だなあ。いいじゃないか。今は同じ学園の学生同士だろ?」
そう言うカリム先輩にジャミル先輩は軽くため息をつく。
「……はぁ。それじゃあ、俺が皿に盛りつけるから運ぶのを手伝ってくれるか?」
「お安い御用だぜ!」
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作者名:紅葉 | 作成日時:2022年9月5日 19時