夕刻サプライズ! ページ27
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あれからスカラビア寮に戻ってきた私達。絨毯は元の物置に戻し、廊下を話しながら歩いていた。
「はぁ〜〜〜!!本当に楽しかったんだゾ!」
「ホントホント。あんな体験、生まれて初めてだったな〜」
「喜んでもらえてよかった。なんだかんだあっという間に夕餉の時間だな」
たしかに散歩に夢中で気づいていなかった。楽しい時間は早く過ぎるというのは本当らしい。
すると、廊下の奥からジャミル先輩がやって来る。
「カリム!やっと戻ってきたな。夕食の前に確認しておきたいことがある。来てくれないか」
「ああ、わかった。ユウたちは先に談話室へ行っててくれ」
「了解でーす」
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「あ〜腹減った。今日の夕食はなんだろう?」
「今日の特訓もキツかったな〜」
談話室に行くと既に多くの寮生が、夜ご飯を今か今かと待っている。グリムと空いている席を見つけると、そこに座った。
「ここは冷たい隙間風が吹き込むオンボロ寮と違ってまさに楽園なんだゾ。カリムもいいヤツだし。オレ様ここの寮生になりてぇな〜♪」
「えっ」
「…………冗談なんだゾ」
う、嘘だよな、グリム……?お前はオンボロ寮生であり続けてくれよ……?
私の顔が世界の終わりみたいな表情だったのか、やれやれと言うみたいにグリムは背中を摩ってくれた。
今私、すごく幸せです……。
「みんな揃ってるな?夕食の前に、寮長から寮生全員に話があるそうだ」
すると談話室にカリム先輩とジャミル先輩がやって来た。しかしカリム先輩を見て、すぐに違和感を覚えた。
「カリム先輩……?」
さっきのような明るい瞳にはハイライトが入っておらず、赤黒く濁っている。表情も冷たく冷えきっており、感情が読み取れない。
なにより、あの時……私を夜の散歩に誘ってくれたような、強く惹かれるものがどこにもなかった。
「寮長から話……ですか?」
「あ、そっか。そういえばカリムのヤツ……居残り特訓はやめて明日からスカラビアも冬休みにするって言ってたんだゾ。寮生のヤツらは超喜ぶだろうけど。オレ様は美味いメシが冬休みのあいだ食えなくなって残念なんだゾ〜」
「う、うん……」
無言で立ちつくすカリム先輩。嫌な予感は止まらず、私はじっと彼を見つめた。
「この冬休み、オレたちスカラビアは自主的に寮に残り毎日6時間自習をすると決定したが……オレは気づいた。
それじゃ、全然生ぬるい!!!!!」
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作者名:紅葉 | 作成日時:2022年9月5日 19時