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2匹のコブラが絡みつく、その鏡を抜けた先は立派な宮殿がそびえ立っていた。周りは地平線の先まで広大な砂漠で覆われている。
「ここがスカラビア寮か。本当にムワッと暑くて、真夏みてぇなんだゾ!」
「学園の方とは真反対の天気だね」
「冷えた身体が温まるだろう?さあ、こっちだ」
ジャミル先輩に案内されて辿り着いたのは、スカラビア寮談話室。窓がなく、開放感に溢れた作りで周りに散乱してあるクッションや絨毯、カーテンは明らかな高級品だ。
その光景に圧倒されていると、後ろでジャミル先輩がパンパンと手を叩く。
「客人のおでましだ!みな、歓迎の音楽を!」
ジャミル先輩がそう言うと、寮生たちは楽器を構え音楽を奏で始める。優雅で、どこか異国の雰囲気に溢れる音はスカラビア寮の様子を表しているようだ。
「にゃっはっは!オレ様ほどの有名人となるとこんなに歓迎されちまうのか」
「さあ、冷める前にどんどん食べてくれ」
「いただきまーす!あむっ!」
「グリム、お行儀良く食べるんだよ」
私の忠告はさておいて、目の前のご馳走にがっつくグリム。
「う、うまい!口いっぱいに広がるスパイスの香り……後引く辛さ……カリカリのナッツが乗った野菜の炒め物も美味いしコッチの揚げ
「肉料理とスープもあるぞ。まだまだたくさんあるから、食べていってくれ」
「んっ!この味付け美味しい……!」
「モグモグ……いろんな料理を食べられて本当に楽園なんだゾ〜!」
グリムの言うようにどれもとても美味しいものばかりだ。このスープとかオンボロ寮でなら体が温められるし、あとで作り方聞いてみよっかな。
それにしても、さっきは一瞬疑っちゃったけど、ジャミル先輩は普通にいい人なのかもしれない。今もこっちを見てニコニコしてるし、何よりこの問題児を寮に招いてくれてるんだもんね。
幸せそうに言うグリムに、私はさっきまで感じた嫌な予感はただの勘違いだと思ってしまう。
ジャミル先輩の顔が今まで見てきた人達と似てたから、変に警戒していたのかもしれない。
「……お前たち、なにを騒いでいる?」
すると静かに談話室に上がり込んできた、1人の少年の声が響く。
「「「!!り、寮長……!」」」
「カリム……」
「……?」
豪華な装飾が施されたターバン。腕には白い刺青。首には金の首輪を付けている。
しかしそれは以前目にした、カリム先輩だった。
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作者名:紅葉 | 作成日時:2022年9月5日 19時