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小学校に入って半年後。意外にもたくさんの友達ができ、充実した毎日を過ごしていた。
ある日の夜、なんだか目が覚めた私は水を飲むためキッチンへ向かった。するとキッチンから怒鳴り声が聞こえた。
私は身を隠しながら、その内容を耳に入れた。
「会社が倒産したって、どういうことよ!?」
「どうもこうもない!半年ぐらい前から急に業績が悪化したんだ!」
「そんな…!じゃあ私の従兄弟の治療代はどうなるのよ!?」
「俺が知るか!だいたい、今までどれだけそいつに金を出したと思ってるんだ!たまにはそいつらから出せよ!」
「言ったでしょ!?ウチの従兄弟、もう父親も母親もいないって!」
「じゃあ勝手に死なせとけよ、そんな奴!どうせ容態も良くならないまま、ぽっくり逝っちまうんだからよぉ!」
「ふざけないでよ!半年前までは順調に回復してたのよ!?そしたらいきなり……」
_ギシッ
(あっ…!)
目の前の圧倒される言い合いに私は震えながら、後ろに下がった。運悪く、床の軋む音がして、それに気づいた2人はこっちを見た。
「…あっ、あの…ごめんなさ……」
「そういえば、半年ぐらい前だったわよね、貴方が来たのって」
咄嗟に謝ろうとした私だが、お母さんが今まで聞いた事のないぐらいの怖い低音で遮った。
「おかしいわね。会社の不景気が始まったのも、私の従兄弟の容態が悪くなったのも、全部貴方が来てから……」
のらりくらり歩きながら、お母さんは私に近づいてくる。私は恐怖のあまり、尻もちを着いた。
「ねぇ、こっちは貴方を引き取ってあげたのよ?捨てられた可哀想な子を。なのに……何してくれるの?」
「ぁ……あ……」
「悪魔が……!ふざけんじゃないよ!!!」
次の日、私は最初とは別の孤児院に置いていかれた。
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作者名:紅葉 | 作成日時:2022年8月29日 20時