〇変化 ページ42
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『氷浦さんと、交代させてください』
「「「！！」」」
「おや、地雷について何か分かったのですか？」
にやにやする監督に詩音は首を振る。分かっていたら先に情報を共有するように言われるだろう。
確信がない情報を広めるつもりはない。
ベンチでもフィールドでも、詩音の主張にはみんなが目を丸くしてみていた。
詩音が試合中や練習などの口出しは確かに珍しくはない。が、こうやって「出して欲しい」と進言するのは初めての事だった。
『いえ。ただ……』
「ただ？」
『……分からないですけど、イライラしてきたんで』
「「「え」」」
「おや」
予想していた答えとは真反対のような感情論をぶつけてきた詩音。これには選手どころか監督も驚いている。
理論的ではない彼女ははじめてなのでは？
そう思わざるを得ない。
しかし、詩音の目はいつも通り真面目なものだった。
「イライラって……」
『何に対してかは分からないです』
「不明瞭……」
『でも、』
詩音は変わらない表情でアメリカ代表としてフィールドに整列しているコブラたちを指した。
『あの人たちは、見ていてなんかイライラしました』
「！」
「これって……」
普通ならとんだ迷惑な自己中な意見だろう。
だが、詩音がこういう意見を言うということは、詩音の心境に何らかの “変化” が生まれつつある。
その事実にジャパン陣営は明るくなった。
担架で氷浦が運ばれてくると代わりで詩音が出ることになった。
フィールドの中央で野坂に何かを言った彼女の表情は少しだけ硬かった。
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作者名：おまんじゅう | 作成日時：2023年12月12日 23時
