無色の詩姫【イナオリ】第五章 (ページ39)

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〇兵士ページ39

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「ヘブンズタイムは一種の暗示。マジックの視線誘導の要領で相手の意識を暗示にかけ、時間が止まったように錯覚させているに過ぎません」

『(ですよね)』

「それを見抜いたんですか！？」

「だからってあんなに簡単に攻略できてしまうなんて」

詩音が自身の推測と監督の言葉が一致したことに一縷の満足感を得ている時、ベンチメンバーは驚き、万作が有り得ないというように呟く。

それに応えたのは状況を理解したコーチだった。

「それは、彼らが兵士だからだろうね」

『兵士……？』

「ああ。兵士は上官の命令には絶対服従だ。ときに自分の命を犠牲にしてでも、下された命令は果たすもの。きっと命令されたんだよ」

＿＿何も考えるな。何も見るな。何も聞くな。お前たちはただ命令を果たせば良い。たとえ命が尽きようともな。

『！！』

“「君のような強い意志を持っていない選手が、戦いを制する。オリオンに助けられた人間は皆自身の感情を抑え込んで兵士となり、命令を施行する。そんな人間が生き残るんだ」”

「そう命じられれば、彼らは誰の姿も、どんな声も一切気にかけない」

コーチの言葉にベルナルドの言葉が重なった。

ベンチで話を進めるみんなの声はもう耳に入ってこない。詩音の目にあるのはフィールドで無表情でボールを追いかけるネイビーインベーダーの姿。

自分がなり得るかもしれなかった、兵士のすがた。

彼らは、昔の自分にに重なって見えた。