無色の詩姫【イナオリ】第五章 (ページ26)

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〇本当のサッカーページ26

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「チョロチョロと鬱陶しいチビが！」

ドメルゴに体当たりでボールを取られ、稲森は倒れる。

ボールに足を置いてキープする彼は稲森を見下していた。

「教えてやるよ。世界には絶対に越えられない壁ってやつがあることを……！？」

ドメルゴが言い終える前に、稲森がボールを奪い返し、再び走り出す。

「教えてやるよ！絶対に止められない田舎者がいるってことを！」

『(今のは、完全に相手の落ち度ですね)』

「どんなシュートでもカモン」

途中で衝突したクラリオだが、その衝撃を受け流した稲森は前に飛んでいくボールをひたすらに追いかけてドリブルする。

ゴール前にはアロンソ。

しかし、稲森はシュートを打つことなくドリブルで突き進んだ。そしてアロンソまでをかわして、体ごとゴールラインを越えた。

そのプレーを見ていたクラリオは大きな声で笑い始めた。

「ハハハ……ハハハハ！やられたな……彼等もまた、我々の弱点を突いてきたというわけか」

「フィジカルを誇るスペインだからこそ生まれてしまった防御の弱点、というわけだな」

「まだ同点だ、取り返そうぜクラリオ」

ルーサーがそういうも、クラリオは返事をしなかった。疑問に思うと、クラリオの目はとても澄んでキラキラと輝いていた。

「今私は感じている……心底サッカーの楽しさを。嘗て感じたことのない興奮を。私は今わかった……これが本当のサッカーだ！」