無色の詩姫【イナオリ】第五章 (ページ25)

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〇切り札ページ25

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「いっくぞー！」

再開早々、稲森がドリブルで駆け上がり、スペインの選手を次々と抜いていく。

「何？どういうことだ！？」

「一人であそこまで！？」

スペイン側はもちろん、まだ作戦を伝えられていない他のみんなも驚きを隠せていない中、詩音やアツヤといった一部のメンバーはその意図が分かってきた。

「分かってきたぜ。あれは立派なタクティクスだ。個人でやるやつだけどな」

『チーム連携だけではない、ということですね』

クラリオもその真意に気づいたようだ。

「そういうことか、まずいぞ！全員稲森の道をふさげ！」

円堂の言っていた切り札とは、ラストリゾートのことではなく稲森のドリブルのことだった。稲森のドリブルは、この試合中一度もスペインに止められていない。

そして、強力な当たりを持つプレイヤーと渡り合ってきたスペインは、小回りの利く稲森のような攻撃に慣れていない。

稲森は普段中盤を担い、ボールをキープすることを要求されて、一癖や二癖もあるFWにパスを送るうちにボールのコントロール能力が大きく成長していた。

常にゴールキーパーの位置から稲森のドリブルを見ていた円堂は試合を見ていて、それに気づいたのだ。