無色の詩姫【イナオリ】第五章 (ページ18)

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〇気功ページ18

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「俺じゃねぇのかよ！」

吉良は不満そうに声を上げるが、監督は「どうしましょうかねぇ」と体力が限界に近いだろう灰崎を見た。

その視線に気がついた灰崎はまだ出たいと主張する。野坂もまた進言する。

「監督、僕も灰崎くんにはこのまま試合に出てもらいたいと考えています」

「野坂くんがそう言うなら。では、おーい析谷くん。出番ですよー」

「はい。さ、凌兵」

監督が呼ぶと、にっこり笑って灰崎を押し出す析谷。何をやるつもりだろうかとみんなが不思議に思うのを見ていた監督が説明をする。

「彼はインドで特殊な気功を修行していましてね」

「気功？」

「僕はフィジカルトレーナー兼データ分析担当兼料理長兼データセキュリティ担当兼気功マッサージ師だからね。流石に怪我を治すことまではできないけど……」

『増えましたね』

「ヒーリング・セレブレーション！」

それを受けた灰崎は簡単に体を動かせることができていた。監督曰く、体内エネルギーの流れを利用して疲労回復させたのだという。

灰崎は先程までの疲労が嘘のようにぴょんぴょんと飛び跳ねる。どうやら何も問題はないらしい。

詩音が感心していると、析谷は力が抜けたように座り込んでしまった。この技は使用者の体力を使うらしく、1日ひとりが限界のようだ。

「ありがとよ。思う存分暴れさせてもらうぜ！」

灰崎の自信満々な様子に詩音は少しだけ表情を柔らかくした。気づいた人はいなかったが。