千年樹

第３話 ページ4

河上「痛いでござるよ、また子。」

岡田「ずいぶんとひどいことしてくれるねぇ。」

来島「Aの下宿に忍び込んで怖い思いさせてるあんたらに言われたくないッス。」

　現在、拙者らはまた子に首根っこを掴まれて引きずられている。ものすごい勢いで引っ張られているため、似蔵殿に至っては時々転びそうになっている。

来島「晋助様も怒ってたッスよ。夜中に突然姿を消すから。」

　そう。日中は人の目があるため、下手に動くと真選組に捕まる恐れもある。それ故夜更けにAに会いに行っている。

しかし、娘がなかなか振り向いてくれぬのもまた事実。同じことをもうかれこれ二年ほど続けているのだ。

来島「Aと仲良くなりたいんなら店に通うなり何なり考えるッスよ。ただでさえ真選組に追われてるんスから。」

　また子の言うことは一理ある。普通に交際をするのならば、まずはあの娘の店に通えば良い話。

しかし拙者らには、どうしても早くあの娘を手に入れなければならぬ理由があるのだ。

岡田「俺たちにはあの計画があるからねぇ。江戸を火の海に変える前に、あの娘だけでも救わないといけん。」

　似蔵殿の言い分を聞いたまた子は、いつになく大きなため息をついていた。

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