・ ページ9
三年生にとって最後の公式戦の時期が近づいてきた。
だんだんと部活の空気が変わり、優しいはずの三年生の先輩達もやたらと怒るようになった。
いつも全然やってないくせに、と不満を漏らす同期もいた。
ある日の練習の終わりに三年生が集合をかけた。
「なんで声出さないの？」
中学の引退から大分経って体が鈍った一年はついていくのに必死で、それでも声は出していたつもりだったし、実際ぶちギレられるほど出ていないわけでもなかった。
にも関わらず、先輩はわざと傷つけるような言葉を使って私達を責めた。
先述したように私は過去のことで人の視線や声が苦手だった。
そのときの先輩の目が平たく言えば地雷、つまりは恐怖の対象にバッチリ当てはまる苦手すぎる目だったもので、先輩が先に戻った後にA先生がフォローしに来たときつい泣いてしまった。
とても同期に言えるような理由でもなかったため泣いた理由は「“先輩が”怖かった」と嘘をついて誤魔化してしまった。
高所恐怖症も対人恐怖症も同じ恐怖症なのに対人恐怖症は打ち明けにくいのだ。
それから片付けや着替えも終わって解散になったのだが、A先生にまで嘘をついたことになんとなく気分の悪さを覚えた。
理解してくれる、そんなことは思ってない。
なぜかは未だにわからないがどうしてもこのまま嘘をついたままが嫌で、電車に乗ってもずっと弁解するべきか考えていた。
もしかしたらここ最近一番の行動力だったのではないだろうか。
自分の最寄り駅についた瞬間、広い方の改札へ走った。
同じ電車じゃないかもしれない。
逆方向かもしれない。
同じ駅で降りてないかもしれない。
むしろ降りている可能性なんてほぼ0％。
それでも私は先生を探した。
しばらく待ってみても先生はいなさそうだった。
やっぱり駄目かって諦めかけて、でももう少し、あと三分待ってみようってとにかくキョロキョロと見回した。
すると、いた。
先生がたまたま同じ駅で、同じ時間に、同じ改札を通って来た。
「先生！」
漫画かってくらいベタな展開で駆け寄ったら先生はかなりビックリしながらどうしたの？って止まってくれた。
「さっき泣いたの、先輩が怖かったわけではないです」
せめて、先輩のせいではないってことを伝えたかったのだとここで気がついた。
苦手なことにはかわりないが、それでも優しい先輩だったのだから。
「じゃあどうして？」
A先生は少し首を傾げた。
「えっと…それは……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アレン - 蒼井飛鳥さん» コメントありがとうございます。面白いって思っていただけて嬉しいです！なかなか更新が出来ない状態ですが、これからもよろしくお願いします。 (2018年3月17日 8時) (
レス) id: 418e54c30c (このIDを非表示/違反報告)
蒼井飛鳥(プロフ) - コメント失礼します。私もバイで、同じような方がいるかと占ツクを彷徨っていたらこの作品に出会いました。とてもわかりやすくて、こんなこと言ったら何ですが面白かったです。応援しています！ (2018年3月14日 6時) (レス) id: c15e0519de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アレン | 作成日時：2018年1月17日 7時
