【佐久早聖臣】この病の名前は恋ではない

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咄嗟(とっさ)に扉前でしゃがみ、とりあえずガラス窓から見えないように隠れる。

…一瞬見えた姿だが、恐らくその子は巷で噂の女子。





佐久早「…前にも言ったけど、ムリ。」

女子「っ…ごめんなさい、困らせること言ってるのはわかってる…だから…」

佐久早「あと、俺もう彼女いるし」

女子「えっ…、」





一瞬かつ遠目でもわかるほど噂通りの可愛さなのに、それにまた告白させるほどの佐久早くん。

でもまた振るのか…いろんな意味で「すごいなぁ…」と他人事の私。

…確かにいつもマスクしているからわかりにくいが、マスク下げたときの顔は整っていたような。



まあでも、盗み聞きは良くないし、そろそろ出てきそうだからトイレにでも行って改めて来ようと考える。

そっとその場をあとにしようとしたとき、





女子「…………誰か聞いてもいい…？」

A「…、」(え、待って、それ言わないよね…！？)





恐ろしい一言を聞いてしまった。



やばい、言ってほしくないし、こんな所にいるとバレたら最後だ。

急いでその場を離れる私。





＿＿＿と、次の瞬間、教室の扉が開いた。





………誰かの走る音が、聞こえたかと思えば徐々に遠くなっていく。



間一髪、階段の踊り場に間に合ったものの、方向が逆だったらバレて修羅場を迎えていただろう。

とりあえず、緊張で膨らんだ胸を撫で下ろす。





A「………はぁ…」(これはしばらく入れないですね…)





最近は心臓に悪いことが多いなぁ…なんて思いながら、ばくばくと鳴る心臓を落ち着かせるためにまたさっきのピアノの所に足を運ぶ。



…けど、何を弾こうにも、さっきのを見たあとではとても弾く気になれなくて。





A「………」





………あの子は、本気で佐久早くんが好きなのに、私は微塵もそんな気持ちなくて。

そんな奴が頼まれたとはいえ、彼女なんて…





A「……やっちゃいけない、ですよね…」





＊

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