【佐久早聖臣】この病の名前は恋ではない

1 ページ2

それは、2年になって少ししてからのことだった。



もう少しでテストのため、いつもならいるはずのバレー部もいない、伽藍堂となった体育館。

そこにあるグランドピアノを少しだけ弾いて、満足した私。



帰ろうと体育館を出た時、





？？「…今の弾いてたの、あんた？」

A「…！？」





不意に後ろから声が聞こえ、思わず身体がはねる。



振り返ると、そこには見たことがある姿。





A「………佐久早、聖臣…」

佐久早「なんでフルネームなの…」





ごもっとも、だが口から飛び出たものは仕方ないのでさておき。



そこにいたのはクラスメイトの佐久早くん。

体育館入口横の手洗い場の近くにいたため、出るときに見えなかったようだ。





佐久早「…あんた、ピアノ弾けたんだ」

A「…まぁ」





曖昧な返事だけ返して、そそくさとその場を去ろうと思ったら、彼がまた声をかけてくる。





佐久早「…手、洗わないの？」

A「え…」

佐久早「ああ、俺が邪魔だったのか」





意表をつかれ、再びどきっとする。

そんな中「どーぞ」と言って手洗い場を空けてくれる佐久早くん。

楽器を弾く私は、指先を常に気にして綺麗にするのが癖で、手洗いもそのひとつ。



…なんか見られながら手を洗うの気まずいのですが、渋々洗うことに。





A「…では、」

佐久早「待って、」

A「……、」





ハンカチで手を拭きながら、今度こそ早々に立ち去ろうとするとまた呼び止められてしまう。

今度はなんなんだ…クラスメイトと言えども、彼とはほとんど話したことないし、まだ何かあるのか…

何かあったっけ…日誌？と、思い当たることがないか考えていると、





佐久早「俺とさ、…付き合ってくんない」





ただでさえ気まずい空気が、凍りついたようだった。




＊

2→←設定

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す