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*先天性中枢性肺胞低換気症候群 by.つわはす ページ7

「ねえつわはす君。次は何処に行こうか」


***

心電図が規則正しいリズムを刻む。
そこからでる管を辿ってみれば溜息がこぼれそうな程に白い肌が見える。
その粉砂糖を振るったような美しい肌の持ち主は安らかに寝息をたてていた。
「ふわっ…あぁぁ…」
そのとなりに私はいる。大きな欠伸をしながらも頑張って目を開いて彼に異常が起きないかを見守っている。
「患者さんの前で欠伸なんて、看護師見習い失格かなあ」
私は独り言を呟くと再度彼に向き直り、先程と同じように見守った。


***

「…待って」
後方から声が聞こえる。私はくるりと振り返りつないでいた手を離して声の主、つわはすと向き合った。
「ごっ、ごめん!久しぶりにつわはす君と外出できた事が嬉しくてつい…」
頭を下げ、その正面で手を合わせてごめんなさいのポーズをとる。
「いつもは病室で、患者と看護師の関係だもんね」
夕暮れ時。海辺のレストランを目指す二人はその柔らかなオレンジの光に包まれていた。更に海面が太陽光を反射しているため、ロマンチックな雰囲気も漂っている。
私はレストランを指さして彼を軽く引っ張った。
「ほら!レストランすぐそこだよ!早く行こう!」
彼はこくんと頷く。肯定の意として受け取った私は「先に行ってるよ」とだけ残して受付を済ませに向かった。

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「二名様です!」
清涼感のある制服が似合う店員さんにテーブルを勧められ、私達はそこに座る。
パラパラとメニューに目を通し、オススメという売り文句が愛らしく飾られていたハワイアンなカクテルを二人分注文した。

「つわはす君。海綺麗だよ」
「うん。凄いね。ゲームでもなかなかないんじゃない?」

「あはは。またゲームの話?」
「ふふ」

「…ねえつわはす君。次は何処に行こうか」
「何処にでも連れてってあげるからさ、」
「だから、」

「眠っちゃダメだよ?」


ああ、

貴方が退屈しないように
貴方が眠たくなくなるように

見たことのない景色を二人で一緒に見に行こう。

貴方の記憶に残るように
貴方の目でしか見ることのできない景色を

ずっと、二人で、


なんだかちょっと眠たいかな


先天性中枢性肺胞低換気症候群 ーーー fin

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作者名:歩く黒歴史製造機 | 作成日時:2015年3月9日 22時

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