*ピグマリオンコンプレックス by.フジ ページ1
フリフリリボンのヘッドドレス
ピンクのロリータワンピース
髪はふわふわ綿あめで
まるで絵本のプリンセス
***
「…うん!今日もいい仕上がり!」
私の正面にちょこんと座る青年は手に持っていたコテを机に置き、まじまじと私の顔を見つめた。
彼の端麗な顔が近づく。
その顔は、髪へ服へと次々に視線を彷徨わせた。
ある程度見つめ終えた後、彼はその整った顔に笑みをたたえ、すっと立ち上がって私に声をかけた。
「お腹すいたでしょ。今お昼持ってくるから」
フンフンと鼻歌を歌いキッチンへと向かう彼の足取りは、心做しかいつもより軽やかだった。
余程ヘアメイクがうまくいったのだろうか。
確かめ半分にぽふぽふと髪を撫でてみると、コツンとなにかが指先に触れた。
バレッタだ。
頭についているため形は確認出来ないが、きっと甘甘のきゃるるんとしたバレッタだろう。
ここにきて今更でもあるとは思うが、私と彼は付き合っている。付き合い始めて三年目になるのだが、私は近頃、心の中に謎の大きな孤独感を抱いていた。
「待たせてごめんね。ほら、食べさせて上げるからあーんして?」
キッチンから帰ってきた彼は私の口元に持ってきた料理を近づける。
言うがまま、なすがまま、でもそれじゃないとだめで。
「今回はね、ちょっと調味料変えてみたんだ。Aの口に合うかな」
こくこくと、まるでお人形の様に首を振った私は言葉を発するべく口を開いた。
「ねえフジ」
ん?、とフジと呼ばれた彼は小首を傾げる。
「私達ってさ、カップルだよね?愛し合って、いるんだよね?」
私の問いに一瞬戸惑った後、フジはあははっと女子顔負けのキュートな笑い声をあげた。
「あはは、Aってば何言ってんの?当たり前じゃん!俺はずっと、Aが壊れても愛し続けるよ」
なおも笑顔を絶やさない、絶やそうとしない彼は、再びあーんという仕草を私に求める。
ああ、
そう言う事じゃないのにな
君が変わったのはいつからだっけ
付き合い始めてから?
それとも最近?
もしかしたら最初からだったのかも
でも
悲しい顔をしてはいけない。君を避けてはいけない。そんなことしたら君が私より悲しんでしまう。
私は君のご機嫌取り。
私は君の所有物。
子供がおもちゃを取り上げられたら泣くように、私も君から手を離してはいけない。
さしずめ私は、
君の安定を保つため、君の唯一の楽しみでいるための
君にとっての『お人形』だ。
ピグマリオンコンプレックス ーーー fin
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作者名:歩く黒歴史製造機 | 作成日時:2015年3月9日 22時