2話 ページ3
「おはよう、A」
そろそろ朝練の時間なので家を出ると、いつもは居ないはずの幼なじみの姿。
『あれ、研磨。今日は早いんだね。』
早いといっても、学校に着くと十五分程で朝練開始の時間だが、普段なら自宅前で寝ぼけ眼を擦っている時間だ。
改めておはようと返し隣を歩く。向かいの家も風鈴をチリンと鳴らし挨拶しているようだった。
「別に…目が覚めちゃっただけだよ。最近ホント蒸し暑いし…」
『あぁ、それは分かる。そーいや私寝てる間に蚊に刺されてさ』
「O型は刺されやすいって言うからね」
他愛もない会話をしながら、駅まで歩き始める。
クロは主将ということでもう少し早い出発なのだが、研磨は特に合わせることもなく「間に合えばいい」のスタンスでいる。省エネ思考の研磨らしい。
『あ、電子辞書忘れた。貸してくんない?』
そういえば三時限目くらいに使うと思い出した。木々に朝日が反射して眩しいのか、研磨はより仏頂面を深めている。
ガードレール横を通り過ぎるいつもの朝。ちょっと嬉しいのは、きっといつもより余裕を持って登校出来るからだ。
「人に貸すとヒストリー分かんなくなるからイヤ」
『だいじょぶだいじょぶ、そんな使いませんて』
「前もそれ聞いた」
とかなんとか言いながら貸してくれる。優しいのやらそうじゃないのやら。
「お前じゃなかったら貸してねーぞ」なんてクロの言葉。結局どうなのかは分からずだ。
理由は簡単。そもそも、研磨が人から物を貸してと頼まれているのを見たことがないからだ。
「今絶対失礼なこと考えたでしょ」
『あっ、研磨クン乙女の心勝手に読んじゃダメなんだ〜!』
「図星じゃん」
その上、一人で行った方が絶対速いのに、わざわざ歩調が遅い私と登校してくれるのかも分からない。
でも、聞いたら一緒に行けなくなりそうな気がして、今の今まで迷宮入りだ。
「ホントあっつい…」
あくびを重ねる真横をチラリと盗み見る。朝から注ぐお日様は張り切り過ぎで、半袖ジャージから伸びた腕が日差しにさらされていた。
(…男の子の腕)
特別に色黒だとか、マッチョなわけでもないのに、筋肉の付き方や骨ばったラインはしっかり男の子のものだ。
「どしたの、ぼけっとして。」
『いやっなんでも!!』
「…ほんとに大丈夫?」
パタパタと手で仰ぐ仕草をしてみるも早朝のお天道様と頬の赤みは和らがず、最寄り駅までもう少しの道を楽しむのだった。
113人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねぎ - Rioさん» コメントありがとうございます!嬉しいです、励みになります〜!! (2022年9月27日 23時) (レス) id: 124a1bc937 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 今晩、凄く素敵な小説を見てびっくりしました!更新、楽しみにしてます!(/^_^) ( 初対面なのにゴメンナサイ!) (2022年9月24日 19時) (レス) @page16 id: 9824f121c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ねぎ+ | 作成日時:2022年7月7日 21時