13話 ページ14
季節に合わせて飾った風鈴の音が、陽に照らされチリンと響く。涼しげな音を反射させてなびく金髪が眩しい。
「何でって…
なんでだろ」
『なにそれ』
具合の悪い私への気遣いか、ゲームはミュート。ボタンの音も気にならない。もうちょっと別のところで発揮してくれよ。
願いむなしく、理由を考える素振りさえ見せないままゲームを放り投げ漫画を読み始める。ちょいと自由すぎやしませんかね??
『学校行ってよ』
「いや」
『何で』
またも質問は知らんぷりで、漫画も開きっぱなしに立ち上がり、台所へと向かう研磨。
幼馴染みといえど、一応人ん家だよここ。私に一番言われたくないであろう言葉を、帰ってきたこいつに言おうとしたその時。頭にひんやりとした感触のなにかが乗る。
「氷嚢。温くなってたでしょ」
『…あんがと』
流しの上、右奥の棚。慎重が低い私にはちょっと取りづらい場所にあるそれを見事に探し当ててくれたらしい。
氷がほぼ溶けている氷嚢と、ペンギン柄のかわいらしい物をトレードする。一緒に持ってきたトレーには、体温計や風邪薬も一緒に乗っかっていた。
『至れり尽くせりだねぇ』
「馬鹿なこと言ってないで寝て」
『やだよ、まだ眠くない』
たかが風邪、そんな大袈裟な。今度は私が駄々を捏ねる番で、寝かせようとしてくる研磨に柔らかく抵抗する。
『あーあ、あと二週間しかないのに。』
なんで風邪なんか引いちゃったんだろ。ちらり、目線をずらせば、言う通りにしない私を眉根を寄せ見つめる研磨。その表情に、怒りは籠っておらず。
『…もしかして
心配してる?』
無言になる研磨。
知ってるよ、この不自然な間。図星なんでしょ。
にーっと弧を描くように笑うと、呆れたような表情で頭を撫でられる。
「氷嚢、こんな早く温くなるとか、ずっと顔赤いとか。
…心配に、決まってるじゃん」
珍しく、素直な一言。するすると入ってきた言葉は、熱に侵された顔へ拍車をかけるには充分で。
「…早く寝てよ」
『うん…』
顔を隠すように背を向けた研磨に、軽口も叩けないまま布団へ潜った。
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ねぎ - Rioさん» コメントありがとうございます!嬉しいです、励みになります〜!! (2022年9月27日 23時) (レス) id: 124a1bc937 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 今晩、凄く素敵な小説を見てびっくりしました!更新、楽しみにしてます!(/^_^) ( 初対面なのにゴメンナサイ!) (2022年9月24日 19時) (レス) @page16 id: 9824f121c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねぎ+ | 作成日時:2022年7月7日 21時