１０話 ページ11
現在、14時きっかり。一日の中で一番暑い時間帯が丁度今頃らしい。
太陽の位置や、空気の暖まり方が関係しているとかいないとか。ソーダの味もしなくなったハズレ棒を咥えながら、小学校の理科を思い出す。
『もうアイス食べ終わっちゃった』
「おれも…２個買ってくればよかった」
『お腹壊しちゃうって』
アイスは一日一個まで。小さい頃の言いつけを律儀に守っている私とは対照的に、研磨は食べたい時にガッツリ食べる。偏食で少食だから、存外バランスが取れているのだ。
来た道をなぞり、家路につく。同じ道を通っているので当然だが、先程エンカウントした電柱がすぐ前まで迫っていた。
「そういえば、Aは」
『うん？』
素通りしようとしていた電柱の前で、おもむろに立ち止まる。
目線の先には花火大会の張り紙。
「花火大会、誰かと行くの」
研磨と行こうと思ってたんだけど、一緒に行かない？ 言うなら今、この瞬間しかない。
デートに誘うでもない、ただ幼馴染みとして提案するだけ。
それなのに、緊張して結んだ唇は、そのたった一言を紡ごうとしない。
『いや〜〜〜〜…
ちょっと悩んでてさぁ』
友達みーんな予定あるって言うからさぁ！ と、不自然な間を取り消すように明るく振る舞う。
＿＿＿完全に逃げてしまった。
様子を窺うように横目で見た研磨は、路傍の石を蹴り「おれは…今年クロいないし…」と祭りに消極的だ。言い逃した。
小学校の帰り道、クロと研磨と繰り返した石ころサッカー。ドリブルを受け取り、白線を出ないようポンと蹴る。
「ところで」
『んー？』
繋ぐ、蹴る。音駒バレーが心身に叩き込まれているからなのか、久しぶりなのに長くラリーが続く。
「悩んでるんだったら」
『うん』
一言一言、蹴るリズムに合わせて言葉を切る。
テンポよく進む小石、ざわざわと揺れる木々。
心臓がやけにうるさい。ドクドクと鳴る拍動が、緊張を全身で表している。
「…おれと行こうよ、
花火」
ポチャン。
変に蹴り損ね、側溝に落ちてしまった石。視線を下に向ける口実がなくなり、研磨の顔を見る。
(＿＿あ、)
そっぽを向いているが、耳がほんのりと赤い。
研磨も、おんなじ気持ち。同じように緊張して、同じようにタイミングを計っていて。
なんとなく嬉しくなり、クスリと笑う。
『もちろん！！』
嬉しい、楽しみ。
口角の緩みが抑えられないまま、脳内のカレンダーにマルを付けた。
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ねぎ - Rioさん» コメントありがとうございます！嬉しいです、励みになります〜!! (2022年9月27日 23時) (
レス) id: 124a1bc937 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 今晩、凄く素敵な小説を見てびっくりしました！更新、楽しみにしてます！(／^_^) ( 初対面なのにゴメンナサイ！) (2022年9月24日 19時) (レス) @page16 id: 9824f121c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねぎ＋ | 作成日時：2022年7月7日 21時
