たとえ今日という日を忘れても ―ソードアート・オンライン― (ページ9)

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コウリのレベルは、俺よりたった2､3低いだけだった。
それ自体は予測していたが――…俺を驚かせたのは、その戦闘力だった。戦闘スタイルに多少の差異はあるものの、実力だけを見れば俺や、今や最強ギルド《血盟騎士団》の副団長を努めるアスナと同じぐらいだと思われる。
戦闘中の如何なる時でも表情は全く変わらず、冷静に敵の攻撃を避け、的確に隙を突く。最初見た時はその技量に唖然としてしまった。

防御を捨てた攻撃特化スタイルの俺と違い、コウリの戦闘スタイルを一言で表すと、
《ヒットアンドアウェイ》だ。
敵の攻撃は防ぐのではなく、避けるのが基本。そこからかなり高いと見た敏捷力で敵の背後や死角に回り攻撃する。
時に距離を取り様子を窺い、時にシステムアシスト全開の猛ラッシュをかます。

オーソドックスだが気をつける事も多く集中力も試されるそのスタイルを、コウリは美しいとさえ思える程完璧にマスターしていた。――仮に戦闘スタイルがスキルであったなら、熟練度は1000に到達しているだろう。

戦闘を終え剣を鞘に納めながら戻ってきたコウリは、顎に手を添え前を見据えたまま考え込む俺を見ると、無表情のまま首を傾げた。

「…お前考え事多いよ。そんなんでよく攻略組やってるな」

「……普段からそんなに考え事が多い訳じゃない。俺が老けてるみたいだからやめてくれ」

「はいはい。…次のモンスター探すぞ、早く来い」

――言い合ってる事は犬猿の仲みたいだが、別に雰囲気まで殺伐としてる訳じゃない。何だか…何でも言い合える仲みたいな、遠慮しなくてもいいと思えるような。
出会ってから1日も経ってないのに、不思議だ。

そう考えると、コウリは不思議な奴だった。
技量からして確実に攻略組だと思われるが、果たしてそんな雰囲気がある訳でもない。このデスゲームの事をどう思っているのかもわからないし、一見情熱も諦めも無い、無に見える。

…でも、始めに俺の思考を貫いた根拠の無い確信は、未だに俺の思考の端をちりちりと焦がしていた。

“コウリは、攻略組じゃない”

でも、そうだった場合、今わかっているコウリに関する事が水の泡の様に全てわからなくなってしまう。
何故彼処にいたのか、何故こんなレベリングをしているのか。

――…これは、コウリとパーティを組んだ目的が達成されるのは結構後になるかも…。
頭に浮かんだ考えを、バツの悪い笑みと共に飲み込んだ。