―8― ページ8
.
昨日俺は死にかけた。モンスターとの戦闘中にいきなり“アレ”が来て、油断したところを一気に攻められたのだ。
壁に叩き付けられ、死ぬのか、と思った時、目の前にいたモンスターがいきなり破壊された。
動かない俺の代わりにモンスターを倒した男――それが今目の前で2m近くあるモンスターと戦っているキリトとかいう奴だった。
変な奴だと思った。
どうせくだらない善意で助けたのかと思ったのだが、どうにもそうではないらしい。
何故助けたのか聞いたが、自分の為だ、とだけ言ってそれ以上は答えてくれなかった。
男だが少女めいた顔をしていて俺より年下かと思えば、妙に落ち着いた態度で年上のような気もしてくる。
全身に黒衣を纏った姿は、威圧感とは違う…独特の雰囲気みたいなのがある。
取り敢えず、こいつは攻略組のソロプレイヤーで、何だかわからないが掴めない変な奴。
――それが俺の、キリトという男に対する印象だった。
.
「コウリ!スイッチ!」
俺が黒い背中をじーっと眺めていたら、緊張を含んだ、でも何処か余裕を感じさせる声が聞こえてきた。
愛剣の柄をグッと握り、了解と小さく聞こえる程度に呟き走り出す。
モンスターのHPゲージを見れば、もう1/5を残したところだった。さっきスイッチした時は半分以上あったのに。
…只の目立たないソロプレイヤーにしては、キリトはやたらと強い奴だった。
ちらりと後ろを見れば、体力も殆ど削られていない。
…少し、悔しい。
思考を振り切るように頭を軽く振って、基本技の《スラント》を敵のクリティカルポイントを狙って叩き込んだ。
――脳裏では、こいつを利用して強くなって追い付いてやる、と“弱い俺”が呟いていた。
16人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
羽毛 - 面白かったです。続き期待して待ってます。 (2013年11月19日 14時) (レス) id: 58739b6e62 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ワタリ鳥 | 作成日時:2012年12月18日 1時