たとえ今日という日を忘れても ―ソードアート・オンライン― (ページ4)

今日:14 hit、昨日:18 hit、合計:16,595 hit

―4― ページ4

――結果から言うと、俺はその言葉を拒否した。

普段の俺だったら、そうですかと一言告げて立ち去っていただろう。それだけは断言出来る。構うなと言われても尚纏わり付く奴になるのは真っ平御免だからだ。仮に俺だって構うなと言った奴が纏わり付いてきたら嫌だし面倒くさい。

何故拒否したかと言うと、先程も言ったが、こいつがあの頃のアスナに似ていたからだ。
放っておけない危機感を感じた、と言うのが正しい。

嫌だね、と一言言えば、少年は初めてその顔を俺に向けた。
…驚いたのは、その目が赤かった事だ。この仮想世界では、髪型だけではなく髪色、瞳の色もカスタマイズ出来るが、何となくこの少年にはそれをするような印象が無かった。装備の色が比較的地味だからだろうか。

同年代だろう、という俺の推測は恐らく正しいと思われる。
特に整っている訳でもない平凡な顔立ちだが、真っ白な肌と睨み付けてくる赤い目が独特の雰囲気を生んでいる。

…取り敢えず、表情からして怒っているぽかった。眉を寄せ、憎らしげに赤い目を細めている姿に、ひくりと頬がひきつる。

この危機感をどうにかしたい、という思いがすっ飛んで逃げたくなるが、頑張って踏み留まる。
今回は、後悔に苛まれたくないという理由ではなく、きっと彼が苦しんでいるだろうから、という根拠の無い確信から俺は動いていた。
彼からしたら迷惑極まりないだろうが、善意からの行動である為、俺も自信を持って赤い目を見返した。

やがて、彼の口がゆっくり開く。ふと彼のHPゲージを見たら、もう1/3程回復していた…。

「……何で」

至極当然の疑問に、あんたが苦しんでるから、と即答したくなったが、恐らくそれでは納得してくれないだろう。
暫し考え、口を開く。

「攻略組には思えないあんたが、何でここにいるのか気になったから、かな」

――そう。これも理由の無い確信だけれど。
彼は、きっと攻略組ではない。