たとえ今日という日を忘れても ―ソードアート・オンライン― (ページ3)

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俺が声を掛けてから十数秒経ち、やはり気を失っているのかと思った時、迷宮区の奥底…静かな場所じゃないと聴こえないぐらいの声が、プレイヤーから聞こえた。

「……お前、誰…？」

(まずそれか)

思わず内心ツッコんでしまう。普通お礼とか…(まぁお礼を言って欲しい訳じゃないけど)俺が代わりにモンスターを倒した事は…わかってる、筈。
…名乗るのは、少し躊躇した。何故なら、俺がこのプレイヤーを助けたのは完全な善意からではないからだ。結局俺は、自分が後悔に苛まれたくないという利己的な理由で動いた。

「…通りすがりのソロプレイヤーだよ。それよりあんた、回復結晶持ってないのか？そのHPじゃヤバいだろ」

そう言えば、俺と同年代であろう少年は緩慢な動きでメニューウィンドウを呼び出した。POT…回復用ポーションをオブジェクト化したところを見ると、回復結晶は持っていないらしい。
そこで、俺の首筋をひやりと冷たい何かが撫でた。
こいつ…平気なのか？こんな無気力で、こんな大ダメージ受けて回復結晶も持っていない。

――第1層で出会った頃の、アスナを思い出した。
あいつも…始めは無気力で、あり得ない程の無理をしていた。こいつには、あの頃のアスナを彷彿とさせるものがある。

ポーションを飲んだ少年を横目に、俺は彼が握っている一振りの剣に目をやった。

「…その片手直剣、見た事無いんだけどさ、何て言うんだ？」

少年は俯いたまま、またも緩慢な動きで剣を見た。
――その時、俺は剣の柄に走る黄緑色の線が、スウ、と黒く消えるのを見た。
目を見開いたが、暗闇に紛れる黒い柄を見ていたら見間違いのように思えてきて、そこで少年が口を開いた為、俺はその事はあまり気に留めなかった。

「……教えられない。…俺なんかに構わないで、早く行けよ」

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