たとえ今日という日を忘れても ―ソードアート・オンライン― (ページ18)

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「ッお前、何で…」

「ボロを出した自分を呪うんだな。
…お前、昨日もその前も…いや、もっとずっと前から、こんな時間に迷宮区を彷徨いているのか？」

コウリは限界まで目を見開いた後、まるで何かを堪えるように瞳を伏せた。
何かを言おうとして、躊躇するように口を閉じて――その口から漏れる吐息が震えていたのを、俺は切ない気持ちで聞いていた。

「…何で、言えないのかはわからない。後悔しないと、言い切る強さも俺にはない。
――…言えない事でお前は苦しんでいるのに、何故俺を突き放さない？」

「キリト…」

弱々しい表情で目を伏せるコウリに、俺は1歩、また1歩と近付いていった。
苦しくて苦しくて、それが嫌なら、ここで俺を突き放せばいい。コウリも、俺が意図する事をわかっているらしく、迷うように視線をさ迷わせて――

「お前は…いや、お前だけじゃない…。俺が今まで出会った人達は、皆今を生きていた。
この呪われたデスゲームの中で、精一杯足掻いていたんだ」

――あと1歩でコウリの元へ辿り着く、といったところで話し出された言葉を、俺は足を止めて聞いた。
この話が終わった時、俺はコウリに何が出来るだろうか――…

「皆、俺という闇を照らす灯りだった。皆、常に生きて、死んでしまった俺の心を照らした。
俺も、生きたいと思ったんだ。足掻いて、足掻いて、誰かの灯りになりたいって。

――でも、俺にそれは出来ない。だから…強くなって、上を目指し続けるのが――俺にとって、唯一の生きる、足掻くって事なんだよ」

「…コウリ…、でも。普段のお前は、ちゃんと生きて…!」

「違うんだ、キリト。
…俺には、心が死んでしまう時がある。そして、それは絶対に避けられない。

だから、ここで戦うしか…」

「ッ1人で戦ってる時に心が死んでいたら意味が無いだろ!それに、それが原因で消滅したら、それは心だけじゃなくて存在自体の死を意味するんだ!!
生きて…足掻いていたんだったら、俺と戦い続けろ!!」

気付けばコウリの胸ぐらを掴んで叫んでいた。
胸中の衝動がぐるぐる渦巻いて、あっと気付いた時にはもうそれをぶちまけている自分がいて。無意識に口走った言葉にえっと思った時には、コウリは目を見開いて俺を凝視していた。