たとえ今日という日を忘れても ―ソードアート・オンライン― (ページ16)

今日:7 hit、昨日:18 hit、合計:16,588 hit

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後ろから足音が聞こえて、俺は足を止めた。すると、背後にいる何者かも足を止める。

(…PK、か？)

まずそう思ったが、直ぐにあり得ないと内心で首を振る。
PK(ﾌﾟﾚｲﾔｰｷﾙ)を行うオレンジプレイヤーは、こんな最前線には現れない。何故なら、奴等は身の安全の為に、必ず自分達よりレベルの低い獲物を襲うからだ。

でも、そうでなければ、今俺の背後にいるのは通常プレイヤー…多分攻略組の誰かという事になるのだが…。
今日、いや昨日エギルに言われた事を思い出す。睡眠不足は自殺行為だ、と。
それは正論で、攻略組ともあろう者達なら誰だってわかっている事だ。きっと、こんな時間に迷宮区を彷徨いているのは俺ぐらいだろう。

……そうなると、考えられるのは1つ、だろうか。

自殺しようとしている人間、だ。大した力も無いのに誰もいない迷宮区に来て、このデスゲームから逃れようとしている者。
そうなると俺の後ろにいるのは、俺を道連れにしようとしているのか。

ここまでの思考演算所要時間、優に30秒だ。
その間何も行動を起こさなかった相手に、取り敢えずカマを掛けるつもりで話し掛ける。勿論前を向いたまま、いつでも剣を振り上げられるようにして。

「…おい、お前」

――しかし、背後の奴から発せられた言葉の内容は、俺の予想の範疇を越えていた。

「寝ろよ、お前」

「――、は…？」

耳が捉えたその声。唖然として言葉の意味をすぐには理解出来なかったが、それが聞き覚えのある声だという事はわかった。
その瞬間、俺は警戒も緊張も忘れて振り返り――

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そこに憮然として立つ、黒衣の剣士を見た。