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俺は雑踏で溢れ返るアルゲードの街を、考え事をしながら歩いていた。
考えていたのはコウリの事だ。ほんの少しわかった気でいたけど、やっぱりコウリにはまだわからない事が多すぎる。特に…出会った時のあの、“無気力”。
昔のアスナに似ている、と思ったが、先程まで話していたコウリにその雰囲気は全く無い。彼女のように無理をする様子も全く見られなかった。態度や振る舞いだって、少しの明るさを感じさせる程だ。
それが、本当のコウリなのだろうか?じゃあ、迷宮区で会った時のコウリは何だったのか?
考えてもわからないものはわからないと判断し、俺は溜め息を吐いて宙を仰いだ。天空からは物言わぬ鉄の蓋が夕暮れの光を反射してくるだけだ。
俺は感傷的な気分になり、シケた溜め息をもう1度吐いて帰路を辿った。
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索敵スキル補正により暗視モードになった目が、モンスターの群れを捉えた。
ランダムに出現するモンスターでも、群れで生息する設定だったり、偶々同じ場所に複数出現する場合もあったりする。
コウリは背中から愛剣
《スランクレウム》を引き抜き、左腰に据え体を地面ギリギリまで倒した。柄の黒いラインが黄緑色に輝き、刀身は薄い青に輝く。
刹那、コウリの姿は掻き消えた。詳しくは敏捷力全開で高速移動した訳だが。衝撃波がバンッ!という音と共に空気を叩く。
モンスターの群れに突っ込み、《レイジスパイク》を決めた。鮮やかなライトエフェクトが舞い、モンスターの叫びに似た呻き声が響く。次いで、バタバタと地に伏せる電子の獣達。
阻害効果(デバフ)の1つ…麻痺(パラライズ)だ。モンスター達のHPゲージが緑の枠で覆われている。
コウリは群れの真ん中で呑気に大きな欠伸をしてから…《サイクロン・アーク》で周りを一閃した。
「…少し弱くなった…いや、俺が強くなったのか…?」
背中の鞘に剣を納めながら、小さく呟く。その表情は暗闇に紛れて見えない。コウリは小さく1歩を踏み出すと、草を踏み締め野外(フィールド)を歩いていった。
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――コウリがホームに戻ったのは、朝方の4時の事だった。
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羽毛 - 面白かったです。続き期待して待ってます。 (2013年11月19日 14時) (レス) id: 58739b6e62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ワタリ鳥 | 作成日時:2012年12月18日 1時