たとえ今日という日を忘れても ―ソードアート・オンライン― (ページ2)

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ひたすらに上げた敏捷力にものを言わせて、俺は音が聞こえる場所まで猛ダッシュした。

音が聞こえてきた事からわかっていたが、場所はそんなに遠くはないらしい。
全力で走っていれば、すぐに半人半獣のシルエットと、姿まではわからないがその奥に、壁に寄り掛かるように倒れる影が見えた。

俺は走りながら抜刀し、剣を振りかぶる。刀身がペールブルーに輝き、システムアシストにより身体が自然と動く。
片手剣上段突進技、《ソニックリープ》

加速する腕と足。モンスターは背後の俺に気付き振り返るが、もう遅い。既に剣先が心臓――クリティカルポイントを捉えていた。
そのまま剣はモンスターの心臓を貫き、一瞬の沈黙の後、大量のライトエフェクトと共に爆散した。

俺は一息つき、剣を背中の鞘に戻してから、壁に倒れているプレイヤーに向き直る。

レザー素材の、灰色のコート。第1層ボス戦の時まで俺が装備していたものに似ている。あの時《コート・オブ・ミッドナイト》を装備し直さなければ、黒ずくめとか黒の剣士とか呼ばれなかったのかな…いやでもあれは悪のビーター的演出として…などとグダグダ考えてから、ハッとしてプレイヤーに意識を戻す。

下は黒のズボンに焦げ茶色のブーツと、普通の装備だ。
レザー素材で揃えているという事は、敏捷力重視のステータスなのかもしれない。

――そして、すぐ傍に1本の片手直剣があったが、これは見慣れないものだった。黒い柄に黄緑のラインが入った、銀刃の剣。
今まで見たどの剣とも違う。よもや俺の知らない片手直剣があったとは…とここまでの思考を5秒程で済ませてから、俺は壁に寄り掛かって俯いたプレイヤーが身動き1つしない事に気付いた。

「…おい、大丈夫か？」

プレイヤーのHPは見る限り赤ゲージでギリギリ残っていたが、ショックで気絶してしまったのかもしれない――俺はこの仮想世界でも気絶出来る事を知っている――強張った声で尋ねた。

…これで返事が返ってこなかったら、また寝袋を使うのかぁ…。