3匹のストーカー【4】

うつろい ページ34

「重い！ 重〜くない？ 暇な休日、外は雨。そして、2人は喧嘩中。あー店の中までカビ生えそう」


休みの癖にオープンから店に来る暇な女が、カウンターでボヤき始めた。
朝食もここで食べ、今から昼食も食べるつもりでメニューを開いている。


「ピザにしとこうかなー、あ、ブルーチーズ嫌いだからね私」

「……ソラちゃん、全然面白くないよ」


同意。

Aは、朝から機嫌が悪い。加えて俺も。


「店のカビ心配するより、自分の事心配しろよ。カビ生えてんのお前だろ？ 」

「セフンムカつくー、超ムカつくー、ああ、ムカつくー」

全く心の篭ってない棒読みで反応される。

「リンリンは今日もデートだって言ってたけど？ 」

「ちっ、何でリンリンに彼氏が出来て、私がいつまでたってもフリーなの！ 」

「理想が高い」

Aがズバリのとこを指摘すると、「イケメンは世界を救うんだから！ 」と叫びだした。

「セフン私にだけ言ってくるけど、Aだって、ずっと彼氏いないじゃん。なんでー？ なんで私だけカビとか言うわけー？ えー？ 変なのー？ ねー？ 」

ニヤニヤしながら反撃してくる。
俺の気持ちに気付かないのは鈍感過ぎる本人だけだ。

「ピザ奢ってやってもいいけど」

「え、じゃあコーラも宜しく！ ってかセフン今日休みじゃなかった？ 」


そうだ。本来なら、昼まで寝てる筈だった俺が店長の代わりに朝から店を開けた。

昨日、店を抜け出した罰として。



夜の9時を過ぎて、店内も賑わってる時だった。
常連のヌナ達がカウンターに並び、俺も一杯飲みながら接客する。

そこへ、来たんだ。


ペンギンが。


焦った顔して。


いきなり鍵貸してくれって言うから、何言ってんだコイツって思った。


無視してヌナとの会話に戻ろうとしたら「Aが！ 」って大声を出すから、そこで鍵の意味が分かってカウンターを飛び出した。



昨日は気付かなかったけど、ペンギンは何で俺がAの家の鍵を持ってる事知ってたんだ？


怪しい。



とにかく走ってマンションに到着。

鍵を開けたら、まさかの白猫がいて、Aの頰を摘んでた。


俺はてっきり倒れてるとか、そういうの心配をしたのに、「やっぱり」って後ろでペンギンが呟いて、なら先に言えよな。


忘れ物を取りに来ただけだという白猫は、あっさり帰って行って残されたAが1人俺たち2人から尋問を受ける羽目になった。

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