秘密の場所【短編】 ページ2
ザッザッ、と砂を踏む。
ここには、何回来ただろう。
来るたびに、自分の無力さに胸が痛む。
『久しぶりに来たな…。』
あの人の世話とか、実験とか、学校とか、
やることが多くてなかなか来れなかった、この場所。
ここは、俺とあいつしか知らない、
まぁいわば、俺とあいつの秘密の場所。
俺はなにかあるたびにここに来る。
あいつも一緒に来てくれる。
ここに来ると、なぜだか、何もかも忘れられる。
忘れちゃいけないようなことも、忘れられる気がする。
それは、ここが俺にとって、
大切すぎる場所だから、だろう。
他のもののことなど、すべて忘れてしまうほど…。
俺はしばらく立ち止まって景色を見た。のどかだ。
俺の住んでいるところとはまた違った景色だから、
いつも新鮮で、スッキリとする。
この空気を吸うと、頭がすーっとして気持ちいい。
『もうそろそろ行くか…。』
俺はまた歩きだすと、ある場所で足を止めた。
『久しぶりに、来たよ。』
呟いて、持ってきた花を、前の花と交換した。
そして、今日、一番言いたかったことを告げた。
『俺、希望育学園に行くことになったんだ。希望ヶ峰学園の姉妹学園だぜ?すごいだろ。………応援してくれよ。』
そう言って少しだけ微笑むと、声が聞こえた気がした。
「頑張れ、______。」
俺は暫くの間、その場に座り込んでいた。
時間が、とてもゆっくりと過ぎているような気がした。
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