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それから私は、何をどうやって過ごしたのか、全く覚えていない。
たしか烏野が終盤出てきた、大王様と呼ばれていた人のサーブに苦しめられて。
ああ、そういやそのサーブを受けたのは、蛍だっけ?
でも、勝った。
ーーーーーーだから?
試合の後、来栖さんとアドレスを交換した。
「私、新しい友達作るの大好きなんです。 Aちゃん、よろしくね」
そうやって笑みを浮かべる彼女の前で、私は笑えていたんだろうか。
可愛い子だ。
おまけに、優しい子だ。
誰からも好かれる女の子。
背の高い私なんかより、160cmに満たない彼女の方が、きっと、蛍ともつりあっている。
だけど、
だけど、
それでも私は。
「あ、えと。 ・・・月島くん!」
来栖さんが頬を赤らめて彼に話しかけるのを目にした時、私の中の何かがぷつんと切れて。
「・・・・・由良!?」
呼びとめる菅原さんの声にも応えず、土砂降りの雨の中を走りだしていた。
・
・
・
灰色の雨に濡れて、髪も、スカートの裾も、ぼさぼさになって。
通りすがりの人が私を見て、怪訝そうな顔をして去っていくけど、そんなの、どうでもよくて。
(可愛い子、だったなあ)
来栖さん。
私とは違う、曇りのない、まるでお日様みたいな笑顔。
ふわふわ、ふわふわ。
まるで“女の子”を形に描いたかのような子だった。
まだ会って間もないけれど、これだけは言える。
私は来栖さんのことが、好きだ。
たとえ蛍の隣があの子のものになってしまっても、彼女を嫌いになれない気がする。
自分のこの世で最も愛しい人に、蛍に、運命の人が見つかって。
それで、それが来栖さんみたいな、可愛らしい人で。
「なんでっ・・・・・」
何で、貴方の幸せを、願えないの。
私は蛍の、運命にはなれないけど。
でも、この世で一番蛍のことを想ってるのは、間違いなく、私、なのに。
「、う、あぁっ、ああーーーーーっ」
涙が枯れるくらい、泣いた。
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そのあと、傘を片手に、菅原さんが探しに来てくれて。
2人で、帰った。
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蛍は、追いかけてはこなかった。
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sukai(プロフ) - 鎖奈さん» 了解しました。 (2015年2月6日 22時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - sukaiさん» そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです。ピンク要素の少ない、暗くて重いだけのオメガバースに需要があると思ってなかったので・・・。新しい短編集でもよろしくお願いします。 (2015年2月6日 22時) (レス) id: a4e6000211 (このIDを非表示/違反報告)
sukai(プロフ) - この作品とても好きです(≧∇≦)更新楽しみにしてますo(^-^)o (2015年2月6日 19時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鎖奈 | 作成日時:2014年11月22日 20時