検索窓
今日:2 hit、昨日:15 hit、合計:61,257 hit

08 ページ9

それから私は、何をどうやって過ごしたのか、全く覚えていない。








たしか烏野が終盤出てきた、大王様と呼ばれていた人のサーブに苦しめられて。



ああ、そういやそのサーブを受けたのは、蛍だっけ?






でも、勝った。









ーーーーーーだから?









試合の後、来栖さんとアドレスを交換した。






「私、新しい友達作るの大好きなんです。 Aちゃん、よろしくね」



そうやって笑みを浮かべる彼女の前で、私は笑えていたんだろうか。









可愛い子だ。





おまけに、優しい子だ。









誰からも好かれる女の子。





背の高い私なんかより、160cmに満たない彼女の方が、きっと、蛍ともつりあっている。









だけど、







だけど、









それでも私は。









「あ、えと。 ・・・月島くん!」




来栖さんが頬を赤らめて彼に話しかけるのを目にした時、私の中の何かがぷつんと切れて。









「・・・・・由良!?」




呼びとめる菅原さんの声にも応えず、土砂降りの雨の中を走りだしていた。































灰色の雨に濡れて、髪も、スカートの裾も、ぼさぼさになって。




通りすがりの人が私を見て、怪訝そうな顔をして去っていくけど、そんなの、どうでもよくて。









(可愛い子、だったなあ)







来栖さん。





私とは違う、曇りのない、まるでお日様みたいな笑顔。





ふわふわ、ふわふわ。



まるで“女の子”を形に描いたかのような子だった。









まだ会って間もないけれど、これだけは言える。






私は来栖さんのことが、好きだ。



たとえ蛍の隣があの子のものになってしまっても、彼女を嫌いになれない気がする。









自分のこの世で最も愛しい人に、蛍に、運命の人が見つかって。



それで、それが来栖さんみたいな、可愛らしい人で。









「なんでっ・・・・・」





何で、貴方の幸せを、願えないの。









私は蛍の、運命にはなれないけど。



でも、この世で一番蛍のことを想ってるのは、間違いなく、私、なのに。









「、う、あぁっ、ああーーーーーっ」




涙が枯れるくらい、泣いた。


























そのあと、傘を片手に、菅原さんが探しに来てくれて。



2人で、帰った。


















蛍は、追いかけてはこなかった。

09→←07



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (35 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
25人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

sukai(プロフ) - 鎖奈さん» 了解しました。 (2015年2月6日 22時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - sukaiさん» そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです。ピンク要素の少ない、暗くて重いだけのオメガバースに需要があると思ってなかったので・・・。新しい短編集でもよろしくお願いします。 (2015年2月6日 22時) (レス) id: a4e6000211 (このIDを非表示/違反報告)
sukai(プロフ) - この作品とても好きです(≧∇≦)更新楽しみにしてますo(^-^)o (2015年2月6日 19時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鎖奈 | 作成日時:2014年11月22日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。