06 side・K ページ7
情けない話だ。
少しでも彼女の気を惹きたくて。
誰にも言ってない秘密ーーーーーもちろん山口にさえも、を簡単に話してしまった。
「・・・・・・ふーん」
ほら、目の前のお姫様は形の良い眉を少し動かしただけ。
分かっていた。
彼女は僕がαだからって、媚びるような女じゃない。
だけど、
だけど、
「・・・・・・・っ、」
もう少しでいいから。
由良Aの世界の、異分子になりたい。
そう思った時には、なぜか、両目から涙があふれ出ていて。
ダサいし、かっこ悪い。
こーゆーのは、趣味じゃない、のに。
「おいで」
そう言って無表情な彼女が、両手を広げる。
「αでも、辛いことってあるものね。
私の隣でなら、泣いてもいいよ」
・・・・・違う、違うんだ。
僕が泣いているのは、他の誰でもない、君のためだ。
「・・・・・・・ぁっ、」
その日僕が流したのは、由良Aと僕の“今”が、少しでも交わった、
そのことに対する喜びの涙だった。
・
・
・
それから何度か、由良と、Aと、体を重ねた。
苦しくて、胸がぎゅうっとなって、でも、それ以上に幸せだった。
なんとなく、分かっていたことだけど。
Aは、βだった。
知っている。
僕は、αだ。
αとβは、結ばれることは正確にいえば可能だ。
でも、僕にはこの世の何処かに、「運命の番」というものがいて。
もし僕がそれと出会ってしまった時、彼女は、僕は、一体どうなってしまうんだろうか。
「、蛍っ」
知っている。
彼女が流す涙は、僕のためのものだ。
いつの間にか、僕たちの想いはどうしようもなく交わってしまった。
僕のせいだ。
僕が彼女を望んだせいで・・・・彼女は、こんなにも。
好きな女を力づくで奪い取って、自分の手で幸せにするのと、
ただ相手の幸せを願い続ける。
・・・・・・・どっちが本当の愛だと思う?
昔、そんな感じのことを、誰かに聞かれた。
僕は、
僕は、
「・・・・・・わかんないよ、」
一つ季節をまたいでも、臆病な僕はいまだに結論を出せずにいて。
・
・
だから、ああなったんだ。
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sukai(プロフ) - 鎖奈さん» 了解しました。 (2015年2月6日 22時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - sukaiさん» そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです。ピンク要素の少ない、暗くて重いだけのオメガバースに需要があると思ってなかったので・・・。新しい短編集でもよろしくお願いします。 (2015年2月6日 22時) (レス) id: a4e6000211 (このIDを非表示/違反報告)
sukai(プロフ) - この作品とても好きです(≧∇≦)更新楽しみにしてますo(^-^)o (2015年2月6日 19時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鎖奈 | 作成日時:2014年11月22日 20時