０３ side・A ページ43
ドン、ガタン、ドサッ。
「・・・いった・・・」
お嬢様を抱きしめるようにして、床に転がる。
｢赤葦、王子さまみたい！かっこいいね！！」
笑う彼女にはかすり傷一つないようで、安堵した。
俺に向けられるまっすぐな笑顔。
それはこのセカイでは、極めて異質なものだ。
Ωの社会的地位は、低い。 本当に、低い。
αやβからは邪魔者扱いされるのが世の常、なのに。
「ふふ、そんなに見つめてどうしたの？」
この人だけは違った。
お嬢様・・・Aは、このセカイで数少ない(おそらく両手の指で数えられる)純血のαだ。
親も、その親も、その親の親も・・・・どれだけ遡っても、ずっとα。
それだけあって、社会的地位も俺とは比べられないほど高いはずなのに。
それでもこの人はいつも、俺を隣に置こうとする。
それが同情から来るものか、それとも他の種類から来るものか。
・・・・今はまだ、気づかないふりをさせてほしい。
気づくと目の前にAの顔があった。
「赤葦、私に見とれちゃったんでしょ」
「・・・どうぞお好きに解釈を」
「赤葦しんらつ！！ っていうか、赤葦最近冷たくな、
「・・・・静かに」
彼女の唇に、そっと人差し指を押しあてる。
Aの頬が朱に染まったのは一体何故か。
聞こえる。
「お嬢様、どこですか！！」
「婚約者様がお待ちでいらっしゃいます！」
足音に怒鳴り声。
どくん。
彼女のシャンプーの香りが鼻腔をくすぐって、頭がくらくら揺れる。
「・・・ふう」
どうやら去って行ったようで、二人同時に肩を下ろした。
「お嬢様、婚約者とは・・・」
「あーうん、パーティーつまんないから逃げ出してきちゃった、いえーい」
ヘらり、なんて彼女が笑みを浮かべる。
よくよく見ると、彼女が身につけているのはワンピースタイプのドレス。
生地もよさそうだし、これ一着で何軒家が建つんだろうか。
裾のところが破れているのは、見なかったふりをしよう、うん。
「・・・もう少し、跡取りとしての自覚を持ってください」
そう告げると。
彼女は、困ったように笑った。
「だって、赤葦と話してる方が楽しーじゃん」
・・・ああ、もう、本当にこの人は、ずるい。
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sukai(プロフ) - 鎖奈さん» 了解しました。 (2015年2月6日 22時) (携帯から) (
レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - sukaiさん» そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです。ピンク要素の少ない、暗くて重いだけのオメガバースに需要があると思ってなかったので・・・。新しい短編集でもよろしくお願いします。 (2015年2月6日 22時) (レス) id: a4e6000211 (このIDを非表示/違反報告)
sukai(プロフ) - この作品とても好きです(≧∇≦)更新楽しみにしてますo(^-^)o (2015年2月6日 19時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鎖奈 | 作成日時：2014年11月22日 20時
