１０ side・A ページ36
３日ほどたち、また許嫁が家にやってきた。
どうせ身体を求められるのは目に見えている。
分かっていたことだが、部屋に入ったその瞬間に衣服を脱ぎだす即急な仕草には
思わず乾いた笑いがこぼれた。
「久しぶりだから、今日はいっぱい楽しもーねぇ」
そうやってへらりと笑みを浮かべて。
抱いてやると頬を赤らめ、恍惚の表情で俺の名前を呼び続ける。
違う。
「・・・っく・・・・あき、・・・、ん」
俺の手が身体に触れるたびに悲しそうに顔を歪めて。
いつもその瞳に俺への憎悪をうつして、涙を流しながら俺に抱かれるあの女とは。
何もかも、違う。
唇を重ねながら許嫁を目の前にして思ったのは、
“あ、Aの方が上手いな”
ーーーーそれだけだった。
分かってる。
女を抱いているときに、他の女の苦しげな表情がちらつく。
それが何を意味しているのか気づかないほど馬鹿じゃない。
ピローン、なんて、間の抜けた音がして。
スマートフォンを手に取ると、【A】・・・・・彼女からの着信だった。
思わず通話ボタンを押そうとすると、
「でないで、」
いつの間にか起きていた隣の女が端末を素早く奪い取り、着信拒否をタップする。
「ねえなんで、」
「なんでいつまでたっても、私を見てくれないのよっ・・・！」
つぶやかれる言葉全てに、何一つ心は動かされなくて。
だけど次の瞬間、胸の奥に冷たいナニカが刺さったような気がした。
「−−−−まあいいか、あと少しで貴方は本当に私のものになる」
そう言って、狂ったように彼女は笑いだして。
「はは・・・・・あんな女、死んじゃえばいいんだ」
「まさか、」
「うん、お父様の部下が今あの女のところに向かってるところよ・・・・
すでに息の根を止めてしまってるかもね、あははははっ」
「−−−−−−死ねよ」
最期に一つその女に、最初で最後の“本心”を残して。
次の瞬間、女の笑い声がぷつりと止まった。
「・・・・Aっ・・・」
口元に付いた赤黒い液体を拭い、その場から走り出す。
お願いだからもうこれ以上、俺から彼女を、“愛”を奪わないでくれ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sukai(プロフ) - 鎖奈さん» 了解しました。 (2015年2月6日 22時) (携帯から) (
レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - sukaiさん» そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです。ピンク要素の少ない、暗くて重いだけのオメガバースに需要があると思ってなかったので・・・。新しい短編集でもよろしくお願いします。 (2015年2月6日 22時) (レス) id: a4e6000211 (このIDを非表示/違反報告)
sukai(プロフ) - この作品とても好きです(≧∇≦)更新楽しみにしてますo(^-^)o (2015年2月6日 19時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鎖奈 | 作成日時：2014年11月22日 20時
