０９ side・A ページ35
まあ、由良A自身は知らないだろうけど、
俺があの女に身体を許したのは、そんな俺自身の歪んだ心の葛藤もあって。
「ん・・・・・、あっ・・・・」
保健室のベッドが軋む音がする。
「大声出さないで、誰かに聞こえたら責任とれるんですか？ うるさいんですけど」
「・・・・、うっ・・・」
この女、初めは面倒くさいとか思ってたけど、結構悪くないな。
後に聞いたことだが、AはΩらしい。
俺は自分がαとしてこの世に生を受けたことを憎んでいるけれど、
でもまあ身体に流れているのは正真正銘αの血なわけで。
「・・・・・・・ふーん」
あの日初めてΩと交わした身体は、甘い香りと熱を帯びていた。
やばい、くせになりそう。
一つだけ不満があるとしたら、行為を終えた後の彼女の表情だ。
まるで涙をこらえるように、歪んだ笑みを浮かべて眠りにつく。
恍惚の笑みを浮かべる女を幾度となくみてきた俺にとっては不思議で仕方無くて。
何であんな顔するんだろ、
・・・・・なんて嘘、気づいてる。
“別に身体だけでも、良いから”
そう言って唇をかみしめた彼女の姿を思い出す。
かみしめた唇からは赤い鮮血が滲んでいた、
強情で意地っ張りな彼女の、精いっぱいの防衛手段。
「A」
彼女が眠っているからか、思いのほか簡単に言葉が唇からこぼれおちた。
決して彼女の前では呼ばない、彼女自身の名前。
呼んだらもう、戻れなくなってしまう気がするから。
「A」
何度も何度も、
「A」
呼び続けて。
「んっ・・・・・くに・・・・・・」
頭をなでてやると、寝ているはずの彼女の唇が小さく弧を描き、俺の名前を呼んだ。
「・・・・・・・・・・・もう、」
ああ、むかつく。
ーーーーーーーーーだから、この女が嫌いなんだ。
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sukai(プロフ) - 鎖奈さん» 了解しました。 (2015年2月6日 22時) (携帯から) (
レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - sukaiさん» そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです。ピンク要素の少ない、暗くて重いだけのオメガバースに需要があると思ってなかったので・・・。新しい短編集でもよろしくお願いします。 (2015年2月6日 22時) (レス) id: a4e6000211 (このIDを非表示/違反報告)
sukai(プロフ) - この作品とても好きです(≧∇≦)更新楽しみにしてますo(^-^)o (2015年2月6日 19時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鎖奈 | 作成日時：2014年11月22日 20時
