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「は、」



悪い冗談かと思った。







でも、その言葉を告げた時の彼の声は、私を抱きしめる彼の指先は、確かに震えていて。



私は今まで夢見てきた幸せのカタチが、紛い物であったことに気づかされてしまう。









「じょーだん、だよね」




そう問いかけてはみるものの、彼の言葉が真実であることは、


今この場で覆しようのない事実だった。









「・・・・・何で私なの?」





徹の周りには、私なんかより綺麗な人がいくらでもいるのに。



ずっと幼なじみとして一緒にいただけで、徹の隣が私じゃなきゃいけない理由なんて何もないのに。









きっと私は今、泣きそうな顔をしているのだろう。



徹は私の顔を見て、そらして、ごめんね、なんて小さくつぶやいた。









「わかんない、けど、Aじゃなきゃ駄目だった」









あ、一緒だ。





私が理由なんて何もなく、岩ちゃんじゃなきゃ駄目だと思ったみたいに。



徹も私じゃなきゃ駄目だと、そう言った。







さすが幼なじみ、なんて笑える状況だったらどんなに幸せだっただろう。









彼の私を抱きしめる腕に力がこもる。






「A、」







彼は頭がいいから。



きっと気づいているんだ、私が岩ちゃん以外の男をそういった目で見れないことに。





彼は優しいから。



きっと自分の想いをその綺麗に作られた笑顔に隠してしまうのだろう。









「とおる、」




私もね、貴方が大切だよ。



好きで好きでたまらないよ。








でもね、それでも、私は。









徹の腕を、そっと振りほどく。









「・・・・・ごめんなさい」







徹のことが、好きだから。



いい加減な返事なんて、したくなかった。

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sukai(プロフ) - 鎖奈さん» 了解しました。 (2015年2月6日 22時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)
鎖奈 - sukaiさん» そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです。ピンク要素の少ない、暗くて重いだけのオメガバースに需要があると思ってなかったので・・・。新しい短編集でもよろしくお願いします。 (2015年2月6日 22時) (レス) id: a4e6000211 (このIDを非表示/違反報告)
sukai(プロフ) - この作品とても好きです(≧∇≦)更新楽しみにしてますo(^-^)o (2015年2月6日 19時) (携帯から) (レス) id: 4118f4027b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鎖奈 | 作成日時:2014年11月22日 20時

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