Sweet butterfly〜Donghae〜2

零れ落ちる涙 ページ4

*


「え…？」

「あ、プロポーズっていうか、二人の将来のこと考えてって言っただけなんだけどね」


ほんのりと頬を染めて。
ﾄﾞﾝﾍオッパとの将来を夢見てるユリオンニがとても輝いて見えて。
あたしは、目の前が暗くなって行くのを感じた。


「そ、うなんだ…」

「うん」

「それで…ヒョンはなんて…？」


やだ、どうしよう、声が上ずる。


「……考えてくれるって」

「そ、う……なんだ」

「でも、どうかな。即答してくれなかった…」

「そんな、ﾄﾞﾝﾍヒョンはユリオンニのこと大切に思ってるから
簡単に返事できなかったんだよきっと！」


なんで。
こんなにベラベラ言葉が出てくるんだろう。


「きっとさ。そのうちきっと、ヒョンの方からオンニにプロポーズされるよ！！」

「そうかな…(笑)」

「そうだよ！」

「やだ、お見舞いに来たのに私の方が励まされちゃったね。ごめんね。
疲れたでしょ？もう帰るわ」


そう言って立ち上がったオンニを引き止める勇気は、今のあたしにはなかった。


「え？ううん。大丈夫だよ。来てくれてありがとう」

「じゃあね」


オンニを見送ったあたしは、きっとひどい顔してたと思う。
もしかしたら、オンニにも、気づかれたかもしれない。


でも、本心を隠す余裕も演技力も、あたしは持ち合わせてはいないから。


遠くなる足音を聞きながら、必死で出てくる嗚咽を両手で押さえた。



ただ、好きでいるだけでよかった。


ダンスが上手でカッコ良くて。


甘い歌声が魅力的で。


子供みたいに純粋で、優しくて、時にワガママで。


そんなオッパを、いつかちゃんとオッパって呼びたいって。


ヒョンっていう、特別な呼び方もいいけど。


それでもやっぱり、ちゃんとした女の子として、オッパって呼びたかった。


そしていつか、あたしの本当の名前も呼んで欲しいっていう贅沢な願い。


だけど、それももう叶わない。


人のものになっちゃう。


本当に。


その事実が、こんなにもあたしを打ちのめす。


「オッパ……」


誰も聞いてない部屋で。


あたしはひとり、声に出して呼んだ。


「オッパ…ﾄﾞﾝﾍオッパ…好き…好きだよ……」


届かない言葉を吐き出して。


これは言ってはいけない言葉だから


飲み込もうとするけど、喉がふさがって飲み込めない。


口をついて出てしまった言葉は一体どこに向かえばいいんだろう。


零れ落ちる涙を、止めることも出来ずに。


ただ、泣き続けた。


*

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